byりゅう

+++喧嘩+++

「痛っ・・・!」
コナンは、痛みの余り小さく声を漏らす。
「しみるけど、もう直ぐ終わるから・・・っと、はい、お終い」
蘭は、持っていた救急箱を閉め、元あった場所に戻した。
そう、今日、何故かコナンが怪我をして帰って来たのだ。
それ程酷いものではなかったが、唇も切れ、目元は軽く腫れていた。
どうしてこうなったかと言うと、それは1時間前に遡る。
*****************************
コナンは、学校帰りに阿笠宅へと招かれ、博士の発明を見せられていた。
そして、言った一言・・・。
「博士、もうちょっとマシな発明出来ねぇのか・・・?」
「な、なんじゃと?これのどこがマシじゃないと言うんじゃ?」
阿笠は、心底不思議そうに尋ねる。
「・・・なぁ、灰原もそう思うだろ?」
コナンは、阿笠の問いに答える気にもならず、哀へと話しを振った。
「さぁ?私は、別に悪くないと思うけど?・・・その、へ、変声・・・」
哀は、言い難そうに語尾を濁らせた。
「変声クマちゃんじゃ!」
哀を見かね、阿笠が胸を張って答えた。
―阿笠の作り出した発明は、変声機に録音機能を持たせ、

それをクマのヌイグルミへと入れ、好きな言葉を好きな人の声で聴くことが出来る、という発明だった。
「しかもよォ、これの感想聞きてぇんなら、歩美とかの方がいいんじゃねぇか?」
「おぉ、そうじゃのォ。そりゃ、気づかんかったわい」
ハッハッハッ、と高笑いしている阿笠を、コナンは苦笑交じりに笑った。
「あ、俺そろそろ帰らねぇと、蘭に怒られちまうっ!」
そう言って、コナンは阿笠宅を出て、ダッシュで帰り道を走っていた。
「高校生なのに、大変ね・・・」
こんな台詞が阿笠宅で発せられていたとは知らず、コナンはただ、走っていた。

コナンは、帰路途中、走るのをやめ、のんびりと愚痴りながら歩いていた。
「―った〜くよォ・・・。なんで俺の門限が6時なんだよっ・・・!」
コッ、とコナンは足元にあった小石を蹴飛ばした。
と・・・、小石の飛ぶ末に、見慣れた人影が見えた。そして、それを囲む人影も・・・。
「歩美・・・?」
そう、そこに見えたのは、吉田 歩美だったのだ。
そして、歩美は上級生の男子に囲まれている様子が此方から伺えた。
「ん〜?一体、なにやってんだ?」
男子が大人数で一人の女の子を囲むなんて、良いイメージはない。
相手の男子は見渡すだけでざっと6人はいることが分かったコナンは、

阿笠博士に発明してもらったサッカーボール噴出ベルト外し、

後ろ手で持つと、歩美のところへと近づいて行った。

「おい、どうしたんだよ?」
いきなり背後から声を掛けられた歩美は、驚きの余りキャッ、と悲鳴を上げた。
「男が何人もで女の子囲むってのは、あんまりいいイメージねぇけど?」
そういいながら、コナンは歩美を庇うような形で、相手の前へと歩み出た。
「コ、コナン君・・・?」
歩美は、いきなり現れた人物がコナンであることに、無意識に、嬉しさを込めた呼び方をしていた。
「んだよ、おめぇは?この子はな、俺の弟が目ぇ付けた子なんだよ」
小学3年生くらいの少年に見下された態度をされ、コナンは少なからずムッとした。
しかも、歩美を囲んでいた理由がマセたガキの行為だと知り、益々いらついていた。
そこで、コナンは相手を軽く罵ろうと、口元にニヤリと笑みを浮かべ、こう言った。
「この子はな・・・、俺の彼女だよ・・・」
その言葉に、歩美は頬を赤らめ、相手は気分悪気な表情を浮かべた。
「だから、てめぇの弟の彼女見つけてやりてぇんなら、他当たれよっ!」
コナンは、そういいながら、後ろ手で持っていたベルトのスイッチを押し、軽く後ろへ投げた。
「黙れっ!・・・兎も角な、俺はその子を連れてくって弟と約束したんだよ。
おい、おめぇら、その小僧のこと押さえつけとけっ!!」
その言葉と共に、周りを囲んでいた男子5名がコナンに飛び掛った。
しかし、それをコナンは持ち前のフットワークでそれを交わし、

先ほどから膨らませて置いた―アドバルーン大にまで膨れ上がった―サッカーボールの前へと滑り込み、

キック力増強シューズを”小”に合わせると、その男子達目掛け、軽く蹴飛ばした。

ボゴッ・・・

鈍い音を立て、男子5名は地べたで伸びてしまった。
「さぁて、ボス戦と行くか・・・?」
ニヤリと意地悪い笑みを浮かべたコナンに、先ほどまで粋がっていた男子は震え上がった。
「く、くそー!!」
怯えを恥と感じたその男子は、思い切りコナン目掛けて突進して来た。
不覚にも、体制を整えていなかったコナンは、その男子の頭と目元をぶつけてしまった。
「くっ・・・!」
カラン、と小さな音を立てて、黒ぶちの眼鏡が地面へと落ちた。
「ガキのくせして、やるじゃねぇかよ」
小学1年生らしからぬ言葉を発したことに気づいていないコナンの瞳には、悪戯な炎を宿していた。
「うぉりゃっ〜〜〜!!!」
相手の男子は、我武者羅に拳を振り、コナンは軽やかと避けていた。

ピッ・・・

小さな体にも体力の限界があったのか、慣れぬ体での喧嘩のせいかは分からないが、

相手の我武者羅に振っていた拳が、コナンの口元を掠った。
ツー、と唇の端から血が伝い、コナンはそれを拳でクッと拭った。
「二発、だったよな・・・。おめぇが、俺を痛めつけてくれた回数はよォ・・・」
コナンは、そう呟くと、相手の視界からふっと姿を消した。
「なっ・・・!?」
相手が呆気に取られている間に、コナンは背後へと回り、膝の裏をコッと軽く蹴った。
「あぅわ・・・!?」
情けない声を出し、相手は地面にガクリと膝を着けた。
と、同時にコナンは相手の眼前にグイっと顔を近づけ、ニッコリと笑って見せると、大降りに手を振りかざした。
「うわぁ〜〜!!」
相手は、半べそになりながら、手で頭を覆った。

ピタ・・・

当たるか当たらないかくらいのところで拳を止めると、

相手はヘニャヘニャと腰を抜かしてしまっていた。
「バーロー・・・。ガキ相手に、本気になるわきゃねぇだろ?」
そう言い放ち、コナンは落とされた眼鏡を拾い上げると、キッチリと掛け直した。
「歩美、大丈夫か?」
コナンは、後ろで震え上がっていた歩美の元へと近づき、

怪我が無いかざっと見回すが、目立った外傷はないようだった。
「うん・・・。コナン君、ありがとねv」
「え?あ、あぁ・・・///」
流石に、コナンはハッキリと礼を言われると照れるもので、頬を微かに染めていた。
「今回のことで、益々コナン君のこと好きになっちゃった☆」
そう言って、歩美はコナンの頬に、軽くキスを落とした。
「なっ・・・!?///」
本来高校生の青年が、小学1年生の少女にキスされたくらいで
これほど赤くなるものだろうか、というほど、コナンは顔を真っ赤に染めた。
「それじゃ、歩美、そろそろ帰らないといけないから」
歩美が、満面の笑みで言うと、コナンは、”あぁ、気をつけてな”と素っ気無い態度で見送り、

門限を過ぎていることに気づき、大慌てでその場を後にした・・・。
*****************************
そして、今こうして蘭に手当てを受けた、と言うわけである。

「ねぇ、コナン君?どうしたの?喧嘩?」
「うん、まぁ、そんなところだよ」
適当にはぐらかそうとしていると、蘭は俺が何か隠していることに気が付いたらしい。
「他にも何かあったんじゃない?」
と蘭に尋ねられたコナンは、一瞬驚きはしたものの、苦笑しつつこう言った。
「これだけは、蘭姉ちゃんに教えられないなぁ・・・」
「え〜?どうして〜?」
誰が好きな女に他の女からキスされたことを言うんだよ、とコナンは心の中で呟いた。
「秘密だよ、ひ〜み〜つ〜」

―今回の事は、光彦や元太に言おうもんなら、即怒鳴られもんだし、・・・

灰原に言ったら、”吉田さんのこと、泣かしたら承知しないって言ったわよね?”なんて言われかねねぇ・・・。

ぶるる、と身震いすることを考えながら、コナンは今回の事を、心の奥にしまって置こう、

と堅く心に誓っていたのだった。

END

++++++++++++++++++++++++++

作者の感想

久しぶりに書いてみたんで。
これ、カップリングが微妙なんですよねぇ・・・。

+++++++++++++++++++++++++++

管理人の感想

歩美ちゃん可愛・・・・

コナンはやっぱり小さくなっても男らしいんですね。(笑