2002年5月


5月6日

こんなにヘンだぞ!『空想科学読本』
こんなにヘンだぞ!『空想科学読本』


著者:山本弘
出版社:太田出版
発行:2002年5月9日
装丁:守先正+斉藤有紀

と学会の会長が、『空想科学読本』シリーズがいかにウソまみれかを暴く本。
『空想科学』シリーズファンとしてはやや気になる思いで読んだのだが、なんだかなー、うっとおしい!こやつのツッコミ。
科学考証はおそらくこやつのほうが正しいのだろう。
その意味では明らかに柳田理科雄(空想科学シリーズの著者)のほうが分が悪いが、文章の「芸」がある理科雄のほうに思い入れしてしまう。
でもこんだけボロクソに書かれて理科雄さん、どうするんだろ。
これだけちゃんと突っ込まれたら、科学考証の部分ではほとんど反論できないだろう。
ある意味理科雄氏の拠って立つ部分が破壊されちゃったからなあ。
頑張れ!理科雄!


5月12日

哲学者の密室
哲学者の密室


著者:笠井潔
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
発行:2002年4月12日
カバーイラスト:山野辺若

さあ、三週間かけて読み終えました。読み返しキャンペーンも大詰め。
今回はあまりの分量に、表紙のついでに本の背も載せておきます。
1160ページ。キチガイ沙汰ですね。なんせ背の部分の帯の惹句が横書きです(笑)。 しかし内容はその分量に見合ったハイパースケールの本格ミステリ。
なんせハイデッガーです。

パリ郊外のユダヤ人富豪、ダッソー邸に於いて、3重の密室殺人事件が発生する。
被害者は外から施錠された密室で背中を刺されて死んでいた(第一)。
その密室に通じる部屋は、二人の人物が常に監視していた(第二)。
その部屋にも通じる階段は常に使用人が監視していた(第三)。
この3重密室事件を解くためのカケルの本質直観とは・・・。

第一次大戦、第二次大戦を経て(とくにナチのユダヤ人収容所などにおいて)生産された名もなき人々の大量死、それらのボロ屑のような無名の死に対してカケルは、密室での殺人は「特権化され、祝福された死の封じ込め」であると直観する。
そこには二十世紀最高の哲学者、マルティン・ハルバッハ(ハイデッガー)の「死の哲学」が影を落としていた。
だが、第二次大戦中のドイツのユダヤ人収容所でも同様の3重密室事件が起きており、それが今回の事件と密接な関連をもつことがわかり、さらにはエマニュエル・ガドナス(レヴィナス)との議論によりカケルは誤りを自覚し、真相を看破する。
この二つの密室事件は、「生きながら死ぬ」「死にながら生きる」その二つに跨る「宙吊りの死」に本質があったのだ。
そしてハルバッハとの直接対決。ハルバッハ哲学に決定的な齟齬をきたすスキャンダルとは?

本格探偵小説の形式で語られる哲学・思想論、という試みはここで最高峰に達した。
しかもこれだけ難しいことを語ってきちんとトリック、謎解きが成立し、なおかつエンターテイメントしているという奇跡的名著。

さあ、つぎはついに最新作「オイディプス症候群」である。
しかしこれに時間をかけすぎたため読むべき本がたまっている。
頭を切り替え、準備が整うまでしばし待たれい。


5月19日

朽ちる散る落ちる
朽ちる散る落ちる

Rot off and Drop away

著者:森博嗣
出版社:講談社ノベルス
発行:2002年5月8日
装丁:辰巳四郎

Vシリーズももう9作目ですか。
やっぱキャラクターに今ひとつ乗り切れないからすっきりしないのだな、と思った。
みな役割が中途半端で上手く歯車が回ってない感じ。
悪い意味で漫画っぽいのです。
しかし今回の宇宙密室、ありゃなんですか?
メインストーリーとどういうつながりがあるのかわかりません。
いったいどこへ行くつもりなのかな、このシリーズは。


5月19日

ウソの記憶と真実の記憶
ウソの記憶と真実の記憶


著者:中島節夫
出版社:河出書房新社(河出夢新書)
発行:2000年10月1日
カバーイラスト:岡部哲郎

短編の資料用です。
特に面白いわけでもないが、ためになる話がいっぱいでした。
特に匂いと記憶の関係は参考になりました。
すんません、あと特に書くことはないです。
頑張って早く書かねば・・・。


5月30日

わたくしだから改
わたくしだから改


著者:大槻ケンヂ
出版社:集英社(集英社文庫)
発行:2002年5月25日
装丁:和田みずな

とにかく笑えるハイパー職人芸なオーケンエッセイ。
一度単行本で読んでる(図書館)が、加筆もあるようだし、安いので購入。
いやーおもしろかった!
特に冒頭のオノレの卒業文集に対するツッコミ。
あと、「おっぱい」という視点で語る映画論「パイパニック!」。
すぐ読み終わってしまうのが難だけど、とにかく笑いたいときにはオーケンに限ります。
お試しあれ。


5月30日

洗脳原論
洗脳原論


著者:苫米地英人
出版社:春秋社
発行:2000年2月15日
装丁:コグニティブ・リサーチ・ラボラトリィズ株式会社

かなり以前一度読んだ(図書館)のだが、短編資料として再読。
うーむ、勉強になるなあ。
脱カルトのデプログラミングの手法など、カルトの洗脳と同じ手法を用いるのが怖い。
向こう側に染められた脳を、一般常識側に染め替えるわけだ。
それにしても、政府に依頼されハッカー撃退プログラムを作り、アメリカで脳機能学を学び、オウムを中心としたカルトの脱洗脳を手がけるこの著者、いったい何者?


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