統一鉄道に乗ろう(HCM市→ニャチャン)
   
HCM市・Fiona

 在住してから3年以上たつというのに、ベトナムで鉄道というものにのったことがない。
 ベトナムは電車はないのだが、ディーゼルを使用した、南北を貫く「統一鉄道」が走っている。
 2003年までは外国人料金が存在しており、外国人はベトナム人の倍の料金を払わされていたので、長距離の移動はもっぱら安い「オープンツアーバス」を利用していた。今は外国人料金とベトナム人の料金は、両者の中間の料金で統一されている。
 今回、ニャチャンまでダイビングをしに行くことになったのだが、ニャチャンの空港が中心街から車で30分以上も離れたカムラン空港に移転したので、飛行機はさほど便利とはいえなくなり、ニャチャン在住の「と」さんからも、「鉄道できたほうが飛行機に乗るときみたいに早起きしなくていいし、駅は中心街から近いし、結構快適に寝られるよ」というアドバイスをもらい、早起きがとことん苦手な私は、鉄道を利用してみることにした。宿代も1泊浮くし。

 出発は金曜の夜。この日はP氏が仕事でファンティエットまででかけており、夜帰ってこない。手持ち無沙汰で眠たくなるが、転寝してしまうと車内で寝られなくなると困るので、がまんがまん。
 国内旅行でもパスポートを持っていないとホテルの宿泊や帰りの飛行機で困るので、忘れずにポシェットに入れる。
 一緒にニャチャンに行く友達Wさんに、10時すぎに私の家までタクシーできてもらい、そのまま駅まで向かうことにする。
 どうせニャチャンで泳げばWさんにはスッピンの顔をみられてしまうので、スッピンで鉄道にも乗ることにする。気づかれなかったらどうしよー、などと心配していたが、ちゃんと気づいてくれてよかったよ。。。

 タクシーで15分ほどで駅に到着。サイゴン駅は遠目に見たことがあるだけで、足を踏み入れるのは今回がはじめて。ネオンがけばけばしいのがベトナムチック。
 入り口を入ると待合室があるが、人が数人いるだけだ。どうやらみな既に列車にのっているらしい。
 改札は入り口を入ったすぐ正面。チケットをWさんから受け取り、改札にいる女性駅員に見せてホームへ入る。
  ホームの脇には売店が並んでいる。ニャチャンまでだと食事は出ないので、小腹がすくかもしれないから何か買ったほうがいいかな、とも思ったが、深夜に食べるのは太る元だし、トイレに行きたくなっても困るし、何も買わないでおいた。
 鉄道のトイレは汚いことで有名で、参考までに写真を撮ろうかとも思っていたが、中に人が入っていたりして面倒になりやめてしまった。
 車内にはひとり1本、ちっちゃなペットボトルのミネラルウォーターが備えられているが、汚いトイレに遭遇したくない人は水分は控えたほうが無難だろう。

 私たちの座席は最も高いコンパートメント(4人・ソフトベッド)で、値段は24万ドン(※約15USD)である。ちなみにオープンバスだと8USD。
 「他人の席に平気で座っているベトナム人が多い」という噂を聞いていたので、大丈夫かなと心配しつつ自分たちのコンパートメントに行ってみると、やはりベトナム人が座っていた。げげっと思っていると、流暢な英語で話しかけてきた。どうやら越僑(在外ベトナム人)のようである。
 「私たちはグループできているんだけど、部屋が離れちゃったので、あなたたちの席と変えてくれない?」
 どこのベッドかときくと、隣のコンパートメントの上の段だという。おいおい、上と下じゃ値段が違うんじゃい!なんで交換しなきゃいけないんだ。当然断る。
 向こうは文句も言わず(当然だが)荷物の片づけを始め、外にいったんでたのだが、しばらくするとまた中に入ってきて、人のベッドの上にちょこんと座って、皆に分配するのか食べ物を出し入れし始めた。
 食べ物といっても、袋入りのお菓子などではない。ベトナムのハムとフランスパン。しかも大量。ハムのにおいがコンパートメントに充満し、乗り物に弱い私はいや〜な気分になるが、ここで文句を言うとそうとう心の狭い人に思われそうなので、5分だけ待ってみることにする。やっぱり越僑でもベトナム人はベトナム人なんだな。。。
 分け終わったら素直に出て行ってくれたので、ようやくベッドにくつろぐことができた。
 そうこうしているうちに発車時刻10分前にベルがなって、ちょっと外にでていたWさんは、発車時刻になったかと思ってあわてて帰ってきた。
 おそらくこのベルを合図に改札が閉められてしまうのだと思う。発車時刻の15〜20分ぐらいまでには駅に着くようにしていたほうがよいと思う。
 23時になり、今度はベルも鳴らずに列車が動き始めた。

 ベッドは思った以上にきれいでで、2段目までの高さも結構あり、窮屈さは感じない。シーツと枕、ブランケットがビニール袋に入れて置かれており、清潔である。ただし3段目ソフトシートのコンパートメントを覗いたら、1段目と2段目の幅が狭く、2段目を起こさないとベッドに座ることはできないので、くつろげないかもしれない。
 冷房はかなりきつく、上の段は直撃するので寒がりの方にはお勧めしない。下の段でも半そででは寒く、てろてろのウィンドブレーカーを出して着た。トレーナーを着るほど寒くもなく、微妙な温度だ。
 荷物は下の段の人はベッドの下、上の段の人は廊下の上の空間に置くスペースがある。大きなスーツケースを持ち込むと窮屈だと思うし、上の段に持ち上げるのは困難だろう。

 動き出すとすぐ、車掌がやってきた。チケットと交換に、チケット大のプラスチックカードをもらう。どうやらそのチケットでどの場所にどこへ行く人がのっているか把握して、朝は起こしてくれるらしい。
 私たちはしばらくはおしゃべりしていたが、明日5時45分ごろつく予定だし、眠れなければダイビングに支障が出るので、12時前にはドアを閉めて眠ることにした。
 鉄道は日本の列車に比べると振動も大きく騒がしい。普段ならバタンキューの私も、なかなか寝付くことができない。
 ようやくうつらうつらしてきた、と思ったら、上の段の人たちが帰ってきた。ドアの音が大きめなので、すっかり目が覚めてしまった。
 さらに、2段目に上るには私の足元にある、地上1メートルほどの位置に設置されている金具に足をかけて上らなければならない。女性だと無理があるので、どうしても私のベッドに足をかけてから上ることになる。
 戻ってきてすぐに寝てくれればよいのだが、なぜか何度も出入りして、その度にベッドの振動とドアの音で起きてしまう。
 さらにベトナム人は必ずしゃべるし、必ず何か食べる。小さい声で気を使っているのはわかるが、なぜか声は良く響き、ビニール袋ががさがさという音も妙に騒がしく聞こえる。うるさいな、と思って思わず目をあけると、ちょうど向かいの上のベッドから下を見ている女性と目が合ってしまった。「おこしちゃった?」。。。。。。。お願いだから話しかけないでくれ!!!!
 聞こえなかったことにして、目をつぶる。でもうつらうつらしかできない。変な夢ばかりみてすぐ目が覚める。明け方近く、おきたらすでに7時でニャチャンを通り過ぎてしまった、という夢までみてしまった。

 外がなんとなく白んでくると、ドアをドンドンとノックする音がして、鍵をあけて車掌が入ってきた。チケットを返してもらう。
 上のベッドの人たちはなんでそんなに元気なのかわからないが、歯ブラシをくわえて「おはよう!」と陽気に話しかけてきた。頭が朦朧としてあまり話したくないので、「どこからからきたの?」「日本。だけどホーチミン市に住んでるの」という会話だけして、降りる支度をする。

 外に民家が見え始めたが、まだ町という感じはしない。ところが車掌は出口に行くように急き立てるので、廊下にでると、急に町になり、すぐに駅に着いた。
 ニャチャンの駅はちょっとしたフレンチスタイルで、かわいらしい。ただホームの中にバイクが止まっているのがちょっとナゾ。
 チケットは改札で回収されるのだが、「もらってもいい?」ときいたら、問題なくもらえた。

 駅を出ると、めちゃくちゃな英語をしゃべる客引きがいる。どうやら英語のわからないタクシー運転手に橋渡しをして、コミッションをもらっているようだ。「10ドルでどうだ」などといってくるのを無視して、運転手に直接「メーター」というと素直にメーターを倒してくれた。

 私は普段、早起きすることはほとんどない。旅行に行ってもついつい朝寝坊をしてしまう。今回はいやおうなしに早朝町に出ることになったが、いや〜、朝ってこんなにすがすがしかったんですね。
 海に近づいてくると、早朝にもかかわらず大勢の人が海からこちらに向かって歩いてくる。なにか「歩け歩け運動」でもやってるかのようだ。運転手に「この人たちはなに???」と聞くと、運転手は何をきかれているのか理解できなかったらしく、「ホテルはこの道を右ですね」などといっている。2、3回聞くとようやく「海で泳いで戻ってきた人たちだ」と教えてくれた。私のベトナム語がへんなのかと思ったが、それだけでなく、当たり前の光景をさも珍しいもののように聞いたので、道を間違えていると言っているんだと思ったらしい。
 
 今回の鉄道の旅、というか鉄道宿泊、初めてだった緊張もあったのか思うように寝付けなかったけれど、次回は寝られるような気がする。ニャチャンまでなら7時間弱、車で行くよりずっと楽だし、飛行機より安いし、宿代は1泊浮くし、これからは鉄道を有効活用しようと思っている。

<統一鉄道のHome Page>
鉄道の時刻、料金などを確認できる。(英語) http://www.vr.com.vn/English/index.html

チケットの購入は出発駅か、各旅行代理店にて購入可能。
テト(旧正月)や祝日付近は早めにチケットを予約しないと席がなくなる。
よい席を利用したければ、早めに予約することをお勧めする。

(2004年7月)