かがやく星


 キラキラとかがやく星空の中に、星の子ミラクがいました。
 ミラクの仕事は、いらなくなった星くずをあつめること。あつめた星くずは、天の川に流すのです。
 ミラクは、星くずをあつめながら、思いました。
「ぼくだけの星がほしいなぁ」
 あつめた星くずが、ミラクの手の中で、キラキラとかがやきます。
「そうだ! 星くずをあつめて、ぼくだけの星を作ろう」
 はじめは、小さな小さな星くずを一つだけ、ポケットにしまったのです。
 次の日には、星くずを二つ。そして、三つと、そのうち、星くずのあつまりは、小さな小さな星になっていました。
「すごいや! ぼくの星だ!」
 ミラクは、自分だけの星をもっていることが、うれしくてたまりませんでした。
「明日は、もっとたくさんの星くずをあつめよう」
 少しずつ、少しずつ、ミラクの星は、大きくなっていきました。
 そのうち、ミラクは、自分の星を、夜空で、一番大きな星にしたいと思うようになりました。
 星くずは、うんと小さいので、何百個あつめても、小さな星の大きさにはかないません。
「こんなにあるんだもの。ひとーつくらい、いいよね」
 ミラクは、とうとう、星くずのかわりに、小さな星を一つもってきてしまったのです。
 小さな星を一つ入れただけで、ミラクの星は、うんとりっぱになりました。そして、うつくしく、青くかがやきました。
 ミラクは、ほおぅと大きなため息をつきました。
 星くずだけでは、こんなにつよく、ひかりかがやくことはありません。
「なんて、きれいなんだろう」
 ミラクは、自分の星を、夜空で、一番大きく、そして、一番うつくしい星にしたいと思うようになりました。
「星は、こんなにたくさんあるんだもん。すこしくらいいいよね」
 ミラクは、ほんの少しのつもりだったのです。
 けれど、自分の星が、大きく、うつくしくなるたびに、もっと、もっと、大きく、うつくしくしたいと思うようになりました。
「あと、ひとーつ」
 ミラクは、毎日そうやって、一つずつ、星をもってくるのです。
 星空から、星が一つ消えるたびに、ミラクの星は、大きくなりました。
 大きくなったミラクの星は、まぶしいくらいに明るかったのです。
「やっぱり、大きい方が、明るくていいよね。星だって、ちっぽけなままなんて、つまらないんだ。よぉし! お月様よりも大きな星にしてみせるぞ!」
 もう、ミラクをとめられません。
 夜空の星は、みるみるうちになくなっていきました。
「いいよね? だって、ぼくの星があるんだもん。小さな星なんかよりも、うんと明るいんだから」
 ミラクの星は、お月様よりも大きな星になっていました。
「月よりも、大きくて明るい星なんだもの。うんと明るいんだもの。星は、ぼくの星一つでいいんだ」
 けれど、ミラクの星は、少しずつ、かがやきをなくしはじめていたのです。
「どうして? どうして? もっと、大きくしないといけないの?」
 ミラクは、大あわてで、新しい星をさがしましたが、どこをさがしても、みつかりません。
 ミラクは、自分の星に向かって言いました。
「こんなに、大きくて、りっぱな星にしてあげたのに!」
 ミラクの星は、たちまち、まっくらになってしまいました。
 星あかりのない夜空は、ふかいふかい、暗やみです。
 ミラクは、何も見えません。
 なんて、心ぼそいのでしょう。
 ミラクは、ひっしで、あかりをさがしました。
 すると、とおくで、小さな小さなあかりが、ポチッとともったのです。
 それは、生まれたばかりの小さな星でした。
 星くずが、天の川からこぼれ落ちて、小さな星が生まれたのでした。
 その小さな星のかがやきは、今まで見た、どんな星よりもうつくしく、明るくひかりかがやいて見えました。ミラクをやさしくてらしてくれたのです。
 ミラクは、うつくしかった星空を、思いだしました。
 赤や、きいろ、あお色にかがやく星たちのことを。星は、どれもちがっていました。
「星は、どれも一つ一つが、うつくしく、かがやいていたんだ……いろんな星があるから、星空はかがやいていたんだ」
 ミラクは、まっくらになった自分の星から、小さな星を一つとりだしました。
「もとの場所におかえり」
 そういって、夜空に星をかえしたのです。 星は、キラリとかがやいて、流れ星のように流れていきました。
 それから、ミラクは、自分の星から、赤い星、きいろの星、あおい星、いろんな星をとりだしては、夜空にかえしていきました。
 やがて、ミラクの星は、小さく小さくなり、星くずだけがのこりました。
 ミラクは、星くずも天の川へかえしに行きました。
「あたらしい星になるんだよ」
 星くずは、天の川をさらさらと流れていきました。
 ミラクは、もう自分だけの星をほしいとは思いませんでした。
 うつくしい、かがやく星で、夜空をいっぱいにしたいと思うようになったのです。
 ミラクは、今日も、いっしょうけんめいに星くずをあつめていました。





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