おしゃべりな指
まいこは、ピアノのまえで ためいきを つきました。
いつも おなじところで、ゆびが からまってしまうのです。
「どうしてかしら……」
らいしゅうは、はっぴょうかい。
まいこは、おなじ きょくを まいにち まいにち、れんしゅう しているのです。
おおきく しんこきゅうして、もういちど、さいしょから はじめました。
「あっ!」やっぱり、おなじところで、ゆびが からまってしまいます。
「どうして、ちゃんと ひけないのかしら?」
まいこは、ひだりてを じっとみつめました。
「おねがいだから、まいこの いうことをきいてちょうだい」
ひだりてを みつめる、まいこの ひとみから なみだが こぼれおちました。
すると とつぜん、ゆびたちが、しゃべりだしたのです。
「ごめんよ! おいらが わるいんだ」
なかゆびが あやまりました。
「そうだよ! きみが わるいんだ!」
ひとさしゆびは、いつも なかゆびに ぶつかられるので、おこっていたのです。
「あら、しかたないじゃあありませんか、なかゆびさんは、のっぽさんなんですもの」
おっとりと おやゆびが いいました。
まいこは、れんしゅうを すっかりわすれて、ゆびたちの おしゃべりを きいていました。
「きみたちは、いつも けんかばかり しているんだから」
くすりゆびは、すっかりあきれていました。
「あのぅ……」
こゆびは、もじもじ していました。
「おいらは、やくたたずなんだよ。いっそどこかへ いってしまうことが できたら いいのにね」
なかゆびは、なきだしました。
「あのぅ……あのぅ……わたしは、なかゆびさんが だいすきよ」
こゆびが もじもじと いいました。
「けっ! みんな、おれみたいに、りっぱな ゆびになってみろよ!」
ひとさしゆびは、いちばんのときに つかわれる ゆびだから、とても きぐらいが たかいのでした。
「だって、おいらは、のっぽなだけが とりえなんだもの」
なかゆびは、いつも でばんが すくないので、すっかり しょげているのでした。
くすりゆびは、しょうらい たいせつな しごとを まかされているので、のんびりやさんなのでした。
こゆびは、はじっこで、いつも ちいさくなっています。
おやゆびは、せは ひくいけれど、とても、たよりになるしっかりさんでした。
「わたしたちは、5にんみんなで、ちからを あわせていかないと いけないのよ!」
おやゆびは、いいました。
「そうよ!」
いままで だまってきいていた、まいこは、さけんでしまいました。
「おやゆびも、ひとさしゆびも、なかゆびも、くすりゆびも、こゆびも、みんなだいじな まいこのたからものよ! みんながいてくれないと、だいすきな ピアノを ひくことができないじゃない!」
ゆびたちは、びっくりしました。
「ぼく、がんばるよ!」
なかゆびは、いいました。
「しかたないなぁ。おれが、おしえてやるよ」
ひとさしゆびが、てれながら いいました。
「さぁさぁ、みんなで、ちからをあわせて、がんばりましょう!」
ゆびたちは、みんなかおを みあわせて うなずきました。
まいこは、うれししくなりました。
「みんな がんばって!」
ゆびたちに、そういうと、もういちど、ピアノのれんしゅうを はじめました。
ゆびたちは、いっしょうけんめいに、けんばんのうえを、おどっていました。
なかゆびは、あいかわらずだけど、ひとさしゆびが、じょうずなステップのふみかたを おしえています。
「もうすこしで、ちゃんと ひけるようになるわ!」
まいこは、れんしゅうを つづけました。
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