これは、私にとって、私たちにとってきっと吉兆。
そうだと思っているし、そうなるように行動しなくちゃ!


皆既日食




あの日、あのくまに飛ばされて私が着いたところは、小さな空島で天候を科学する国、「ウェザリア」だった。
着いた当初は、飛ばされて仲間と離れ離れになった事と、自分の位置確認が出来ない不安から泣いてばかりだったけれど、ちょっと冷静になって、今の状況を把握したら気分は少し浮上した。
まあ、泣き暮らしたって何も始まらないし、何も起こらない事はわかっていることだから。
今の私の置かれた状況は、無理やり有無を言わさず飛ばされたのでなければ、こちらから頭を下げて連れて来て欲しいところだった。
侮れないわ、くまって!
まあこんな幸運ちゃんと活用しないと!と思って、それからは積極的にこの空島の住人のおじいさん達に色んなことを学び始めた。
私も航海士の端くれ、天候を読むために一通りのことは学んだつもりだったけれど、専門家を前にすると、私の知識なんか素人に毛が生えた程度のものだった。
それがわかると猛烈に知識を吸収していった。もちろん、科学的にも発達していたのでそういったことも勉強して行った。
この島は一応世界政府に属してなおかつ情報を彼らに提供しているので、最先端技術を取り入れることが出来るのだ。
でも天候に関すること意外興味がない住人ばかりだから、俗世間のことには全く興味がないらしく、私達の手配書もこの島に届いていたが、誰も見ていなかった。未開封の手配書の束を見た時に、この島の人たちをより好きになったことは彼らには言っていないけれど。
愛すべき天候バカの集団である。

そんな感じだから外部接触(郵便、通信等)の仕事をいつの間にか私が携わるようになった。もし知られてはまずいものがあったら、排除できるなら排除したいし。
だから「ポートガス・D・エースの公開処刑」という号外ニュースを受け取ったのはまず私だった。
紙面のどこにもルフィや私たちとの関係を記していなかったので、彼らにその号外を見せた。
私はあの懐かしいアラバスタで会ったエースを思い出して「あの、常識人のお兄さんが?」と心の中で思っていたのが顔に現れたのだろう。青ざめた私の顔色を見て住人の一人が言った。
「お嬢ちゃんもやっぱり海軍と白ひげの対決が怖いのかい?」
「え、ええ。そうよ。大戦争になりそうって、新聞にも書いてるし。」
「そうじゃなあ、白ひげは仲間を大事にする海賊だしなあ。
何事もなく処刑が終わるなんてありえないだろうなあ。」
「やっぱりこれも皆既日食が示す不吉な兆しじゃろうか?」
「皆既日食?」
突然差し挟まれた天文用語に反応して話の腰を折ってしまった。いつもなら彼らの話す世間話というのは貴重なので極力話の腰を折らない程度の相槌しか打たないようにしているのに…
「おや、嬢ちゃんは皆既日食を知らないのかい?」
「いえ、あの月が太陽の前を通過することによって、昼間なのに真っ暗になる現象のことでしょう?」
「そう、その皆既日食じゃよ。」
「ということは近々皆既日食があるって事?」
「あるぞ、それももうすぐじゃ。
我々の計算からすると、皆既日食はこの公開死刑の前日じゃな。」
「あら、でも皆既日食って年に1度はどこでも現れる現象だけど、今回はこの島から見られるの?」
「そうなんじゃよ〜。今年は久々にこの島が皆既日食帯に入っておるんじゃ。」
「だから、ワシなんぞこの頃興奮してなかなか寝つけんのじゃ!」
「で昔から皆既日食が起きるたびに良くないことが起こっているのでなあ。今回のはこの処刑かと思ったんだよ。白ひげを相手にしたら例え海軍であっても無傷というわけにはいかないだろうからな。」
その後彼らは過去の皆既日食の事象を色々話してくれたが、私の中ではエースの処刑とそれに伴う海軍と白ひげ海賊団との衝突による世界の影響を考えてしまった。
そしてこの話を聞いたらルフィが取るであろう行動を考えると、それで頭が痛くなってしまった。
どこにいるかわからないけど、この話を聞いたら最後何があっても救出に行くだろ事が読めるだけに、ルフィが今いる状況が凄く気になった。
誰か仲間が傍にいてくれたらそれに越したことはないけれど、あのくまはそこまでやさしくないだろうということもわかる。
というか私だけ一人ぼっちだったら今までの感謝の念はどこやら、あのくまを張ったおさずにはいられないけれど。
まあ仲間が今傍にいなくてもルフィならきっと新たな協力者を見つけるに違いない。
そう、皆は今どこにいるんだろう?大なり小なり私のようにくまの恩恵に預かっているのかしら?
そうだったら良いけど。
もし違った場合ゾロも違った意味で心配よねえ。
特に今まだ体調万全じゃないと思うし。どこかで休めてると良いけれど。
仲間のことを思い出すと軽くホームシックになりそうになるけど、今することは皆既日食の探求とエースの件の続報の情報収集。
やれることをやらないと。

皆既日食当日、この島の住人は全て興奮に包まれた。
真昼間だというのに暗くなっていく空。
そして完全に月が太陽を覆いかぶさった時に現れた、コロナ。そして紅炎。そして日食の終わりに見えたダイアモンドリング。
こんな美しいものが不吉な兆しなんてある訳ない。
もしそうならばそれは世界政府側に取ってという事だろう。
太陽のようなルフィの周りにいる私たちはこの美しい事象を吉兆としてこれから行動していくのだ。
まずは明日のエースのことが、私たちにとって最良の形で決着がつきますように。
この日食の神々しい光に祈らずにはいられない。


やはり時事ネタで。
ナミちゃんはあの島でどうパワーアップするのでしょう?
先が出ていないので思いっきり妄想で書いてみました。
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