流れ星が流れ落ちるまでに願い事を3度唱えるとその願いが叶うってオマエその言い伝えを信じてんだなあ。


流星雨



この船は基本男女平等だ。だから見張り番も一応順に当番が回ってくる。
しかし本来の仕事の性質上コックなどは深夜の見張り番から外されるし、女性陣もまた「か弱い」という理由から深夜番は回らないことになっている。
肉体的には確かに男性と比べてか弱いのかもしれないが、あの二人を前にすると「か弱い」という風には到底思えないのだが、面と向かって言う勇気は全くないが。
とは言っても色々な理由により女性陣が深夜番をすることがある。
ナミは特に「○月○日」という日付指定でその日の当番を交替する。
ナミの度々の日付指定が気になったのである日一度訊ねてみた。
すると返ってきた回答は、
「その日は流星群の極大日なの。」
だった。
流星群?極大日?と首を傾げるオレに、ナミは流星群について講義を軽くしてくれた。
大まかに言えば、流星とは宇宙の塵が地球の大気に突入した時発光するものらしい。そして流星群とは、毎年ある決まった時期に天球上のある点から放射状に流星が飛び出してくるように見えることだそうだ。本当は彗星等が通った後に残された塵のあたりに地球の公転が差し掛かるために起こる現象らしいのだが、とにかくある時期に決まった星座から流星が飛んでくる時期の一番多いあたりを極大日というらしい。
半分以上理解できないまま質問を続ける。
「で、それが何の関係があるんだ?深夜の見張り番と?」
「だって流星群の極大日だったら、流星も見つけやすいし、そうなると自ずと願い事が唱えやすくなるじゃない!」
ほんのちょっとはにかみながらな答えたナミの目は真剣そのものだった。
「あ〜なんだ?じゃあオマエは流星の観測目的ではなく、あの言い伝えを実行するために当番を態々交替するのか?」
「そうよ、何か悪い?
そもそもそれ以外でなんで流星を見るのよ?」
「・・・そうかも、しれねえな。で、何を願うんだ?」
「決まってるじゃない。私が、願うのよ?何を願うって言うのよ?」
「・・・うん、まあそうだな。多分オレの予想は間違ってないと確信できるがまあ、正解は、まあ、いいわ。聞かないで」
そしてそのナミの深夜の見張り番の日、日課のトレーニングを終えてもナミは観測所には来なかった。ここには天体望遠鏡もあるのになあ、と思いながら風呂に入ってさっぱりしたオレはみかん畑の横に居るナミを見つけそこに向かった。
「流星は出始めたのか?」
「ああ、ゾロ。うん。ぽつぽつ出始めたとこ。
で、ゾロも来たってことは流星を探しに来たってこと?」
「ああ、そうだ。でどっちの方向に出るんだ?」
流星に願いをかなえるのに必死になるだろオマエを見に来たなんか言おうものならどういう返しが返ってくるのか、わからないオレでもないので、そのままの流れで話を進めた。
「今日はね、こっちの方向のあの星座のあたりから。
あ。・・・・今流れたの見えた?」
「いや。」
「そっか、目が慣れないとすぐにはわからないからね。 とりあえず、この方向だから、じっと見てみて!
まだ見やすい時間帯じゃないけど、慣れたら流れるのがわかるようになるはずだから。」
それから二人並んで星空を見続けるがなかなか流星は現れない。
どれくらいたったのだろう?オレには長く感じたが実際は30分も経っていなかったと思うが、突然ナミが声を発した。
「金、金、か。
あ、言えなかった〜。よ〜し今度こそ!」
やはり思っていたとおりの願い事につい苦笑してしまう。
「あら?馬鹿にしてるわね?失礼しちゃうわ!」
ちょっと拗ねたようだが、オレのこの反応は真っ当だと思うのだが。それも言えるわけでなく。
まあオレも真剣に探すかな、と思い星空を見続けた。ナミは時折、金金と連呼しているが、どうも最後まで言い終われないらしく、だんだん声に凄みが出てきた。
「ゾロも見つからない?」
星空を見ながらだが、ナミが話しかけてきた。ちょっと集中力が切れ掛かったのだろう。
「いや、さっきから何個かそれらしきものを見つけてはいるんだが、口に出す前に消えちまうんだ。」
「願い事は何を唱えるの?世界一の大剣豪なんて言葉数が多すぎて1回も言えないから短い言葉にしたほうがいいわよ〜。
私なんか2文字掛ける3回の文字数ですら言い終えてないんだから・・・」
「ああ、いわれてみりゃそうだよな。」
答えながら見たナミの表情は本当に柔らかく、思わず抱き寄せてキスをしていた。
「もう、ゾロったら!ダメよ、今私は願い事を唱え終えたいんだから!」
満更でもないだろうに、ナミはすぐにオレの腕の中から出て、再び星空を見上げて流星を探し始めた。
その時ふと妙案が浮かびオレも星空を見上げ流星を探し始めた。
5分ほど経った時、赤い星が他のより若干遅めに動きかけた。すかさず、
「金、金、か・・・」
「ナミ、ナミ、ナミ!」
二人同時に声を発したが、言い終えたのはオレだけだ。
ナミの方を向いたオレの表情はきっとしてやったりといった感じの得意気な顔だったと自分でも思う。
「オレは、言えたよな、今回。」
「い、言えたかなあ〜?」
「言えたさ!だから、願い事は叶うってことだよな?」
といいつつ、ナミをすっぽりと腕の中に抱き寄せて顔中を啄ばみはじめた。
「え?何?どういうこと???」
微妙に状況を把握できないナミはオレにされるがままだ。
「オレは今、オマエが欲しかった。だから流星にそう願った。
 で、めでたくオレはその願いを唱えきったんだから願い事は叶えてもらわないとな!」
キスの合間のオレの説明に
「そんなの、なんかおかしいよ。」
「おかしくなんかないさ!」
そういってる中もオレはどんどん事を進めていく。首に、胸に、そして・・・。
服を脱がし始めたオレにナミの空しい声が響いた。
「え、ちょっと待って。え?ここで?このまま????
私まだ願い事ちゃんと唱えられてな・い・・の・・・に・・・・」

空は極大の時間になったのだろう。流星が雨のようにオレ達に降り注いでいる。
でも、もう、オレもナミもそんなことはもう関係ない。



翌朝、満足そうな顔で機嫌よく甲板でトレーニングをしているゾロに対してチョッパーが不思議そうに機嫌がよい理由を尋ねている。
するとゾロはしれっと、
「昨晩流れ星に向かって願い事をしたら、その願い事が叶ったんだよ。」
と答えた。
「誰に教えてもらったんだ?ナミか?」
と興奮しているチョッパに対してそうだと答えたのだろう、チョッパーがこっちに向かってきた。
「ナミ、昨夜は流れ星が見えたのか?」
「そ、そうよ。」
「でゾロが言ったとおり流れ星に向かって願い事をしたらその願いって叶うのか?」
「うん、正しくは、流れ星が消えてなくなるまでに願い事を3度唱えることができたなら、叶うって言われてるのよ。」
「ナミは昨日は試さなかったのか?」
「試したんだけどね、生憎唱え終える前に消えちゃったみたいで、昨日願った願い事はダメだったんじゃないかな、って思ってる。」
「でもゾロは成功したんだよな。叶ったって言ってたから!」
「そ、そう。良かったわねえ。(あんの馬鹿が!)」
「今度流れ星がたくさん出る時はオレにも声をかけてくれよな?」
願い事がもう半分は叶ったかのようにチョッパー時は食堂に向かって駆けていった。

このやり取りを遠巻きに眺めていたロビンが、
「そういえば、流星の別名で『夜這い星』っていうのがあったわねえ。」
と笑顔で私に言ってくるのでかぁっと顔が熱くなった。きっと赤くなってるに違いない。
「ど、どうして突然、何を・・・」
言いよどむ私に対して、
「だって貴女はどうも体がだるそうな仕草を見せるし、彼は彼で、元気いっぱいって感じでしょ?いつになく。
朝ご飯もまだなのに、満腹って顔した猫のようじゃない?」
そう、ゾロってば本当に満足した顔だ。そりゃあ昨日は散々・・・・
ああ、次回こそ、私の願いを叶えて欲しいわ、と空を見上げたなら、明るい空に何か光ったものが流れ落ちた気がした。
その光は私の頭にこう囁いた。
ごっちそうさん!



鉄板ネタです。流星でナミちゃんなら金というのは本家でも出たことある?と思うぐらいですね。 私も1つルナミで読んだことがありますから。
でもそこからが腐ってもゾロナミストです。毎年ゾロが美味しい思いをするところだけが、ゾロナミストな私ですが。
最後に千陽号の構造でアタフタしまいました。
そして最近の流星群はペルセウス座流星群です。極大は8/13頃です。皆さんも願い事を唱えてみてください。
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