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『Fascia(ファシア)』≧『筋膜』
Fascia(ファシア)の代表格⇒筋膜(Myofascia) |
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筋膜とはなんでしょう?一般には筋肉を包む白っぽい半透明な膜のことを思いうかべると思います。Fascia(ファシア)を筋膜と訳しているため誤解されやすく、その定義は国際的に議論中とのことですが、いのですが、ここでいう、Fascia(ファシア)とは、筋肉を包む膜(厳密には筋外膜)だけを意味するのではありません。
Fascia(ファシア)とは、筋膜(Myofascia)に加えて、腱や靭帯や神経線維を構成する結合組織、脂肪や胸膜や心膜など、明らかに骨格筋と無関係な部位の結合組織を含む概念」と理解されています。
また、その密度と線維配列から整理されます。例えば、高密度で規則性が高い⇒靭帯や腱、低密度で比較的不規則⇒浅筋膜や固有筋膜。
つまり、細かいところでは筋肉や神経を、大きなところでは体全体を包む結合組織ということで、それぞれの場所に適正に位置するように互いに支い、かつ体の動きに対して適度に滑走することでその動きを許容し、立体的なバランスも保っています。
Fascia(ファシア)自身はコラーゲンやエラスチンという線維性の組織と水分などでできています。皮下組織から深部の組織まで存在する、白っぽい薄い膜様組織です。 イメージ的にはクモの巣や網のようなものが、何層も重なって体全体に広がっている感じでしょうか。
そしてFascia(ファシア)はすべるものという認識はとても大切です。たとえば、筋膜間が滑走することで筋肉の収縮がスムーズに行うことができるし、筋膜間にある神経組織は損傷されないともいえます。 |
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『Fascia(ファシア)』の異常とは |
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Fascia(ファシア)の一部に機能障害が起きると、離れた部位の機能に影響を及ぼすこともあります。
機能障害の原因としては、不動(disuse)や過負荷(オーバーユースoveruse)が契機となることが多いと考えられています。例えば、パソコンをはじめとしたデスクワークなど同一姿勢を保持する作業や、外傷に対する炎症反応による瘢痕の形成などです。
これらの原因にて、Fascia(ファシア)が癒着してしまい、結果として様々な症状が起きる可能性ができてしまいます。 |
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神経周囲もFascia(ファシア) |
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神経の周囲もFascia(ファシア)に含まれることは、病態を考える意味でも治療を考える意味でも重要です。
神経は【神経=神経線維+結合組織(神経鞘、神経上膜など含む)】であり、解剖学的にその周囲組織(筋外膜や血管)は連続していることは、マクロ解剖(肉眼レベル)・ミクロ解剖(顕微鏡レベル)の両方の立場から指摘されています。
いいかえると、それぞれの境界を客観的に同定することはきわめて困難であるということで、靭帯・腱・関節包なども同様です。例えば、筋の付着部と関節包を構成する線維群は解剖学的に連続していることが指摘されています。
また、Fascia(ファシア)と自由神経終末(いわゆる神経末端:すべての侵害刺激に応じるポリモーダル受容器が存在し、皮膚だけでなく筋など含めて全身の各部位に分布)や毛細血管の関係性も解明されていません。 |
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『癒着』とは |
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「癒着」自体も誤解されやすい言葉ですが、本来は接着強度の概念は含みません。「癒着」といえば、神経や腱や靭帯の癒着剥離という整形外科手術の術式は古くからにあるように、強固な線維性構造を鋭的に剥離しなければならない強度のイメージがあります。しかし、本来の定義では強度の概念は含んでいません。
・Adhesion=異種組織間・臓器間の接着
・Cohesion=同種組織間接着(Fascia(ファシア)同士の癒着はこっち) |
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『Fascia(ファシア)』が『癒着』すると… |
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Fascia(ファシア)が癒着すると、様々な症状が起きる可能性ができてしまいます。
病態的には、「炎症や血流増減、異常血管(毛細血管)」、「疼痛物質の局所濃度増加」、「末梢神経(自由神経終末を含む)の過敏性」、「phの低下」などが考えられており、結果的に疼痛閾値の低下による痛覚過敏が生じます。
機能的には、組織の伸張性の低下、組織間の滑走性の低下が生じてしまいます。結果的に可動域の制限や痛みやしびれが生じます。例えば、神経線維周囲に生じたFascia(ファシア)の癒着(Adhesion/Cohesion)神経の伸縮・滑走を障害して末梢神経障害の原因となりえます。
過敏化した侵害受容器にて、トリガーポイントと呼ばれる痛みを誘発するポイント(発痛源)ができることもあります。そして、トリガーポイントは筋膜上だけでなく、腱・靭帯・脂肪・皮膚などに広く存在します。
日常生活でも酷使する部位でもあるため、代償性に(かばって)他の部位にも負担がかかり、さらにその部分にも痛みが出ることもあります。
また、神経は筋肉と筋肉の間(つまりFascia(ファシア))を走行したり、筋膜を貫いて走行しているため、その支配領域の神経症状(しびれ感やピリピリ感など)を起こすこともあります。神経は神経線維+Fascia(ファシア)であるのは前述のとおりです。
神経線維はあくまで電気信号を伝える電線のようなものなので、異常シグナルは神経線維周囲のFascia(ファシア)の癒着から生じると考えられます。異常シグナルがその部位に自由神経終末(侵害受容器)から入力されたうえで、脳に伝達されると考えられます。
例えば、臀部深層において大殿筋と股関節周囲の筋(梨状筋、内閉鎖筋、大腿方形筋など)の間を走行する坐骨神経(ほかにも上殿神経や下殿神経など)周囲のFascia(ファシア)に癒着が生じれば、その信号が上殿神経や下殿神経から坐骨神経を経て、脳に伝達されるというわけです。 |
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異常なFascia(ファシア)による症状 |
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神経線維の断線(神経線維の切断や、強い狭窄による神経線維の圧迫による神経伝導障害)がおこれば、神経機能の低下(感覚神経:鈍麻、運動神経:麻痺など)をきたすことが必発であり、この症状は、日内変動などの症状の変動がなく、一定の強さ(程度)であることが特徴です。
一方、「痛み」や「異常感覚や知覚過敏(ピリピリやビリビリといったしびれ感)」という神経興奮症状は、上のような神経線維の近傍の異常なFascia(ファシア)のシグナルを神経線維が伝えていると考えられます。その場合はFascia(ファシア)へのハイドロリリースで症状は改善することになります。
一般的にいわれている坐骨神経痛の多くは、真の意味での神経障害ではなく、Fascia(ファシア)の異常としてハイドロリリースの治療対象です。つまり、坐骨神経痛ではなく、坐骨神経痛「様」の下肢症状といえることができます。ヘルニアなど脊椎部分での圧迫・狭窄があってもなくても、もっと末梢のFascia(ファシア)部分の癒着にて神経症状を起こすこともあるのです。
これらを含めて関連痛(痛みだけでなく、しびれ感も)と考えることができますね。関連痛の症状が強いと、もとの部位(発痛源)の症状がマスクされてしまうこともあります。つまり、痛み・しびれの部位と、その原因の部分が離れていることもあり得ます。
また、話を複雑にさせているのは、必ずしも障害部位は1か所とは限らないことです。経過が長いと連鎖反応のように複数箇所にFascia(ファシア)の癒着が生じていること(飛び石状に点在している場合)もあり得ます(doubule crush、triple crushといった言い方をするようです)。その場合は、それぞれの責任割合のようなものを考えなくてはなりませんね。(経験上、それら障害部位をマークしていくと、いくつかのラインが引けることが多いと実感しています。)
例えば、脊椎部分でのヘルニアや狭窄が高度の場合(硬膜周囲の癒着が強い場合、神経の絞扼による麻痺症状が生じている場合)は話がさらに複雑になっていきます。つまり、硬膜部分の異常の責任割合が大きい場合は、手術が必要と考えられます(いいかえると、手術をしてよくなる場合)。ヘルニアや狭窄があっても、その責任割合が小さい場合(末梢のFascia(ファシア)の異常がメインである場合)は手術の必要性は低いと考えられます(いいかえると、手術してもよくならない場合)。 |
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参考図書➡ |
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