2002年2月


2月7日

と学会年鑑2002
と学会年鑑2002


著者:と学会
出版社:太田出版
発行:2002年2月11日
装丁:守先正+斉藤有紀

ただひたすら「トンデモないもの」を捜し求め続ける「と学会」の面々による研究レポート最新版。
ちょっと内輪受け色が強くて気持ち悪いが、まあよくいろいろ見つけてくるもんです。
ちなみに2002年度のトンデモ本大賞は、渓由葵夫「奇想天外SF兵器」。著者は元J堂の書店員だそうです…。


2月7日

ダイヤモンド・エイジ
ダイヤモンド・エイジ


THE DIAMOND AGE

著者:ニール・スティーヴンスン
訳者:日暮雅通
出版社:早川書房
発行:2001年12月20日
装丁:井上佳子

前作「スノウ・クラッシュ」で、ポストサイバーパンクでナノテクなアクションというポップでスマートな日本デビューを飾った著者の翻訳二冊目。
21世紀半ばの上海周辺、ナノテク革命により、主義や嗜好で細分化された国家都市群が舞台。
ヴィクトリア朝文化復興を目指す都市国家<新アトランティス>の貴族・フィンクル=マグロウ卿は、ナノテクエンジニアのハックワースに孫娘の教育のためのデヴァイス開発を依頼する。
それこそが『若き淑女のための絵入り初頭読本(プライマー)』。
一見普通の本だが、読み手の環境を取り込み、随時その物語を変えていく脅威のインタラクティヴ・ソフトであった。
だがひょんなことから『プライマー』は貧困の少女ネルへと渡る。
『プライマー』をめぐり暗躍する<天朝>、<義和拳団>。
やがて『プライマー』とともに物語を紡ぎながら成長したネルは世界の鍵を握る存在と化し、自らを探す旅に出る……という話。
二段組500ページ強という大長編だが、ネルの成長物語である前半はとにかくオリジナルな世界観が楽しくて飽きさせない。
だが、後半、いろんな人物の思いが交錯していき、どうしても未整理というか、わかりづらい展開になり魅力が半減してしまう。思い切ってカットしてしまうか、むしろ倍増するくらい書き込んだほうが良かったのでは。
ともあれ、これだけ本格的なSFを読んだのは久しぶりである。
最近SFというジャンルについていくのがつらくなりつつあっただけに(年か?)、こういう作品を面白く読めたのは自分としても嬉しいことだった。


2月7日

世界のオキテ
オバはん編集長でもわかる世界のオキテ


著者:福田和也
出版社:新潮社(文庫)
発行:2002年2月1日
装丁:新潮社装幀室

ODAを「オダ」と読む常識知らずながら、なぜか「新潮45」の編集長であるオバはんを相手に、福田和也が時事問題をいろいろレクチャーするという一冊。
面白いけど、やっぱり分かりやすくすればそれだけ単純化せざるを得ないわけで、そんな簡単に世界がわかるわけはないのである。
ま、いいけど。いくらなんでもお手軽すぎるんじゃないか?


2月20日

A
「A」マスコミが報道しなかったオウムの素顔


著者:森達也
出版社:角川書店(文庫)
発行:2002年1月25日
装丁:杉浦康平

ドキュメンタリー映像作家である著者が、オウム事件の後の教団の様子を追った映画「A」。
その撮影記録が本書である。
エスパー清田らを追ったノンフィクション「スプーン」(これも面白いです)を読んだときにも思ったが、とにかく絶妙なのが、あらゆる迷いを完全にさらけ出してしまうその手法。
「自分の方法は間違っているのか」「この現象は信じられるのか」などなど、何もわからないままゆらゆらと描写されるその風景は、逆に強い説得力をもち、こちらの心に響く。
実は実際にこの人の映像作品を見たことないのだが、興味津々である。「A」はビデオになっているのだろうか。


2月20日

黒いトランク
黒いトランク


著者:鮎川哲也
出版社:創元推理文庫
発行:2002年1月25日
装丁:柳川貴代

光文社版に続いて、東京創元社でも復刊された本作。
初版に基づいた光文社版ではなく、加筆を重ねた創元版で読んでみました。
非常に緻密に考え抜かれたアリバイトリックものなのだが…、正直、こういうの読んでてしんどいなあ。身も蓋もない意見ですが。
「こうこうこうすれば出来たはずだ」と言われても、添付の時刻表を調べて確認する気にまでなれない。「ああ、そうなんだろうな」で思考停止してしまう。
よくないね。思考停止は老化の第一歩だ。
巻末で有栖川有栖が「これは本格の世界遺産だ」とまで述べているが、そんな凄いのか…すんません、わからなくて。


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