2003年9月


9月15日

狂骨の夢
文庫版 狂骨の夢


著者:京極夏彦
出版社:講談社(講談社文庫)
発行:2000年9月15日
装丁:FISCO
妖怪製作:荒井良

読み返しキャンペーン第三弾です。
初読のときはシリーズ中最も評価が低かったのですが、今読むとそうでもありません。
とにかく、「プロットをややこしくする」というのがテーマであるかのようなごちゃごちゃ感が実に素敵です。
多分初読のときは、南北朝からの恨みを持った一族のあり得なさやら、あまりにも都合よすぎる偶然がぽんぽん起こったりするのが気に入らなかったのでしょう。まだ読み方が分かっていませんでしたね(笑)。
関係者があっちこっちでいろんな事件に出くわして、それが「偶然」一つのつながった事件だった、といういつものパターンなのですが、それを楽しむ余裕がなかったのです。若かった〜♪。
そう、最新作「陰摩羅鬼の瑕」はその四方八方から皆が事件を持ち寄ってくるダイナミズムがなかったのが物足りなかったんだな。
さて、しばらく読む本がつかえているので次作「鉄鼠の檻」は当分お預けです。


9月15日

殺人の門


著者:東野圭吾
出版社:角川書店
発行:2003年9月5日
装丁:角川書店装丁室

東野圭吾待望の新作長編です。
といっても最近「レイクサイド」「ゲームの名は誘拐」「手紙」とぜんぜん読んでなかったなあ。
今回は版元さんからサンプルをもらえたので・・・。
というわけで、製本前の表紙真っ白のサンプル版なので画像はなしで。
今回は、「人が、人を殺すという行為にいたる感情のプロセスをひたすら丁寧に描く」というのがテーマです。
主人公が小学生の時代から、どのように人の死に興味を持って、殺人に発展していくのかをひたすら丁寧に丁寧に描きます。小学生の頃から絡む怪しい友人に対する殺意。上手いです。手にとるように感情が伝わってくるというのは、やはり羨ましい技術です。
実は先日この本の営業活動で、著者がうちの店に来たので、長編作法や、どこまでストーリーを考えて連載をやっているのかなど、いろいろ質問を考えていたのですが、あっさり訊ねる間もなく去ってしまいました。クールなお方でした・・・。


9月15日

生誕祭
生誕祭(上・下)


著者:馳星周
出版社:文藝春秋
発行:2003年6月1日
装丁:石崎健太郎

馳星周の超大作です。
バブル時代の地上げ師、株の仕手師たちの疑心暗鬼、口八丁手八丁の戦いの中で、一人の若者がメチャクチャに壊れていく物語。
うん、バブルとは上手いところに目をつけましたね。馳星周の、脳髄が端から焦げていくような見境なしのドライブ感は、まさにバブル時代のの金金金の喧騒が似つかわしい。 ただ、今回はほとんど人は死にません。
が、主人公が崩壊していくエグさはかなりのもので、ある意味いつも以上のやりきれない切迫感に包まれています。
はっきり言って文章はあまり上手くないですが、いつもながら勢いがあるので好きです。


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