「ほんまみんなパパラッチかよ、むかつく。」
 
携帯カメラで写真を撮られることが
とても嫌いな人だった。
もともとプリクラとか、カメラとか、
そういう類のものが好きではなかった彼。
 
今や、飲み会、日常、あらゆる場面で
「かしゃり」と音をたて携帯カメラがあらわれる。
飲み会でのそれは、
女の子から男の子に向けられる熱い視線だ。
(と私は思う。)
好きでもない人の写真なんて撮らないよ。
友達としてであれ、恋愛だからであれ、
カメラには必ず好意が含まれる。
 
「かしゃり」と音がたてられるたび、
彼のあの言葉が頭の中を横切る。
カメラがついてなくてよかった。
そのたびに私は思う。
 
カメラなんて要らない。
私はきっと隙あらば彼ばかり写して
不快な気持ちにさせていただろう。
今よりももっと携帯依存女になって
彼の写真ばかりをパラパラと見ていただろう。
 
だから、できれば、この先ずっと
カメラ付きなど持ちたくない。
 
私の恋はいつだって妄想と思い込みで。
思い出という名の妄想を今もなお、繰り返している。