2004年8月


8月10日

天童荒太
幻世の祈り 家族狩り第一部
遭難者の夢 家族狩り第二部
贈られた手 家族狩り第三部
巡礼者たち 家族狩り第四部
まだ遠い光 家族狩り第五部


出版社:新潮社(新潮文庫)
装丁:新潮社装幀室
装画:日置由美子
発行:2004年2月1日〜6月1日
ISBN:4-10-145712-3/4-10-145713-1/4-10-145714-X/4-10-145715-8/4-10-145716-6
定価:476円/476円/476円/514円/667円

月一刊行の全五巻、ようやく完結したのでまとめて読みました。
一月開くと、話を忘れてしまいますよね? 俺だけ?
95年に書かれた単行本、「家族狩り」が、文庫化にあたり大幅書き直し、というか高村薫ばりにほとんど別の本と化してしまいました。
といっても、読んだはずのオリジナル「家族狩り」をまるで覚えていなかったので、違いはよくわかりません。要するにはじめて読む本として楽しめました。
うん、確かに重い現代的テーマ、暗い中にも要所要所に垣間見える希望、などなど面白い要素がたくさんですが、小説としての面白さに直結していなかったような。
「永遠の仔」で見られた、まず「物語」ありき的な面白さが欠けていた気がします。テーマに縛られすぎた堅苦しさかな。


8月22日

ジェイムズ・P・ホーガン
揺籃の星(上・下)


CRADLE OF SATURN

訳者:内田昌之
出版社:東京創元社(創元SF文庫)
装丁:矢島高光
カバーイラスト:加藤直之
発行:2004年7月25日
ISBN:4-488-66303-0(上)/4-488-66324-9(下)
定価:720円(上)/840円(下)

昔めちゃめちゃ好きだったホーガン、最近はまったく読んでいませんでした。
初期の、小説としてはどうしようもなく下手糞なのに、途方もないアイデアの一発勝負SFが楽しくて楽しくて読みふけたものでしたが、だんだん小説としてこなれてきて、小手先の技におぼれるようになったというか、ガツーンという脳を打ち砕くアイデアが感じられなくなって読まなくなりました。
ファンというのは勝手なものです。
ま、それはそれとして、久しぶりの新作、なんだか初期の香りが感じられるじゃありませんか。
木星から飛び出した彗星アテナが地球に落ちていくパニック、土星に移り住んだ人類のユートピア思想、恐竜時代になにがあったのかの大胆な考察、なかなか面白そうなトピックが並んでいたので読みました。久々に。
えーと、補足しておくと、前提となっているのがヴェリコフスキーの「衝突する宇宙」の科学理論なんだそうです。
数千年前、木星から飛び出した彗星が地球のそばを通過し(このときに聖書をはじめ世界各国の伝説の元ネタとなった)、最終的に金星になったという理論で、当時熱狂的に受け入れましたが、結局まるっきり根拠の乏しいトンデモ理論で、キリスト教原理主義プロパガンダとして今では完全に否定されています。
そんな理論をホーガン真正面から使ってます。もっともヴェリコフスキーがどうとかはぼくもほとんど巻末の解説から得た知識で、解説者がやたらホーガンこれでいいの?覚悟して読めよ、みたいな読者を煽る書き方するので不安でしたが、そのあたりはまるで気になりませんでした。
むしろ、前半のハードSFぶりに対して後半が安直で冗長な脱出サスペンスになるのが興を殺いでつらく感じました。
三部作らしくて未解決の謎もいくつもあって、どうも乗り切れず。久々のホーガン、期待感はしぼんじゃいました。


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