古本探偵団(1950〜)

 
 

機械の研究

養賢堂刊 1954年1月号(220円)

業界誌?学会誌?

特集は飛行機ということで古本市で購入しました。表紙はコメット。よく見るとBOACの広告なんですね。表紙にいきなり広告かよ!というわけでこの雑誌どういう立ち位置なんでしょうか?一般向けのものにしては色気がないというか、平気で数式が載っているし、レイアウトが学会誌みたい。かといって純然たる学会誌というには分かりやすく興味を引くような話題に終始している記事もあるしでよくわかりません。業界誌ってやつでしょうか? 出版の養賢堂って専門書を出しているところなのでそういう編集になったのかもしれない。ジェット関連の記事(数式いっぱい)や超音速飛行についての記事(数式いっぱい)があったりして私に理解できるのは日本が再び航空技術の最前線に返り咲きたいという執念だ。レシプロエンジンの時代は終わったこれからはジェットだ、超音速だって、イケイケドンドンで世界に追いつけって感じだったと思える。ところで1954年ということでX-1によって超音速飛行は既に成し遂げられていたはずなのですが、記事の中では微妙に外して書いてある感じで触れられていません。言外には高空でのなにがしかの実験機で既に超音速飛行は出来ている・・・というのは読み取れるんだけど、書いてあるのは正式の速度記録となる低空での3km往復での超音速飛行はF-100に期待だって言う書きぶり。X-1は空中発進の短距離スプリントなので例外とされていたのか、X-1の音速突破がしばらく秘匿されていた(らしい)影響なのでしょうか?(一応1953年2月号の「航空情報」にX-1についての翻訳記事があるのだけど、超音速飛行は達成したとの記述があるのだけれど技術的な記述はぼかされているし具体的な速度については公表できないとなっている)
硬軟いろいろな記事があるのだけれど、コメットの事故の究明は十分に出来ていなかった(致命的な欠陥があるということが認識されていなかった)ようで、金属疲労についての解説はありませんでした。この件はその後重大な技術的課題となるのですが。また戦後厳しく見直された(らしい)安全性に関する要求や環境に対する問題について論じた項もない。まだこの頃は飛行機というものは乗るのはお大尽様だけで思い切りうるさくて煙をどんどんまき散らして飛ぶちょっとヤバいものだったようだ。航空機の運用、開発が許されて2年ほどの日本であります。
で、その後YS-11で旅客機を作れたしT-2で超音速機も作れたし、なんとか国産航空機を作れる国として面目を保ていると言えるのでよかったよかった。