本文へジャンプ  浅井診療所
最新の湿潤療法について
 〜キズ・ヤケドの『湿潤療法(うるおい療法)』〜
    ○湿潤療法とは
    ○湿潤療法のメリット
    ○湿潤療法のポイント
    ○湿潤療法に使用する被覆材
    ○湿潤療法の効果

キズ・ヤケドの湿潤療法とは

○ケガをしたらどうしますか?
   ・キズを消毒してガーゼをあてる(乾燥させる)
   ・カサブタは治った証拠 
⇒以前は常識とされていたことですが、実は間違いなのです。
・消毒薬は一時的に細菌数を減らしますが、それを上回るデメリットとして、キズ表面の細胞やキズを治すために必要な細胞まで傷害する作用があります。また、キズが乾燥しても同様のことが起こります。
・また、キズがあるとすぐジュクジュクしてきます。これは実は膿ではありません。キズを治そうとする液体成分(滲出液)なので、これも乾燥すると働けなくなってしまいます。
・カサブタは、キズを治そうとする細胞などが乾燥のために働けず、死んで固まってしまったものです。治っているわけではありません。しばしば、カサブタの下で化膿してしまいます。
湿潤療法(うるおい療法、モイスト・ウンド・ヒーリング)とは、ケガやヤケドなどで傷ついた細胞を乾燥させず、うるおいを保てるように被覆材で覆う治療法のことです。消毒薬は人間の細胞を障害するというデメリットが大きいため使用せず、水(生理食塩水や水道水)で洗浄します。また、ガーゼもきずを乾燥させてしまうため、創面には直接使用しません。
  参考 ⇒ 新しい創傷治療 http://www.wound-treatment.jp

湿潤療法のメリット
@ 治りが早い
⇒湿潤療法にて人間の細胞(もともと存在する細胞やキズを治そうとする細胞)を守り、自分自身の治癒力をより発揮してもらうため、より早く治ります。
A 痛みが少ない
⇒消毒薬は人間の細胞を障害するため、ピリピリした痛みが生じてしまいます。また、キズが乾燥することによっても痛みが生じます。さらにガーゼを直接キズ表面に当てていると、乾燥するだけでなく、はがすときに痛みが生じ、新しい皮膚ごとはがれてしまいます。
B 化膿しにくい
⇒カサブタをめくってみると、化膿して膿がたまっていることがあります。湿潤療法をしているとその可能性(感染率)は低くなります。
※しかし、湿潤療法は従来の方法より優れているのはいうまでもありませんが、逆に万能というわけではありません。(魔法の治療法というわけではありません。)
 特に広範囲の熱傷に対する治療では従来の方法では発熱(しばしば高熱)を伴うことが多いですが、湿潤療法でも同様に発熱を伴うこともあります。熱傷による発熱に対しては短期間(1〜2日程度)の抗生剤の点滴、もしくは内服薬にて対応することで、速やかに解熱することがほとんどです。

湿潤療法のポイント
キズ口を消毒しない
キズ口をきれいに洗う
 (できるだけ異物を除去する)
キズ口を乾かさない
 (被覆材を使用する)
カサブタは感染源になるため作らない
 (湿潤環境を維持する)

湿潤療法に使用する被覆材
 これらを中心に治療していきます。
 ただし、創の状況によっては死んだ組織を切除(デブリードマン)したり、プラスチベース・白色ワセリンといった軟膏類も使用したり、皮下にたまった血腫や膿を排液するためにドレーンチューブを使用したりします。
☆ 薬局で買える創傷被覆材には次のようなものがあります。
@ プラスモイストP
 調剤薬局で処方箋なしで購入できます。(一般薬局では購入できません)
A キズパワーパッド
 バンドエイドのメーカーのものです。通常のバンドエイドよりやや高価ですが、上記のデュオアクティブET(ハイドロコロイド)と同じ成分です。
B ケアリーブ バイオパッド
 創面に当たる柔らかな素材が滲出液を吸収し、創面にも固着しないようです。
C ケアリーブ 血を固めるタイプ
 出血を止める成分(微粉化酸化セルロース:外科の手術用止血材料のひとつ)が含まれている絆創膏といった感じです。
  参考 ⇒ http://www.wound-treatment.jp(新しい創傷治療)