俺的縮尺世界/ウーフーを弄ぶ

始まり(苦闘の)

ウーフーというのは言わずと知れたドイツの夜間戦闘機ハインケルHe219のこと(一応説明ね)。で、この頁はそのウーフーを身の程知らずにもキットではなく0から作ってしまおうというドキュメンタリー(?)であります。なぜにこの機体か?というと、以前ある人に双発機は作らないの?って聞かれたことがあって、それならこの機体かなってひらめいた訳です。別に実戦で活躍した訳でもなく終戦間近に300機も作られていない機体なのですが、なんか魅力的なんだねえ(その魅力については追々紹介していく予定)。もう一つ、1990年頃の「航空ファン」に“僕のフライングフィールド”という模型エッセイがあって、その中で1/32のウーフーをスクラッチビルドで作るネタがあったんですね。結局、それは密柑山というか老後の楽しみというか、まあ中断してしまったようなのですね。で、それならば俺が…とまあ向こう見ずにもやる気に火がついてしまったというところでして。資料を集めて何とかできそうかなというところでスタート、さてどうなりますやら。

胴体(その1)

図面は前述の航空ファンにおまけでついていたものを1/40に拡大して使用。図面自体はなかなかいい感じだったんだけど作っていくにつれていろいろありますね(考証的に?とか3次元的に成立していない?とか)。ま、世間に流布している飛行機の図面なんてどれもそんなものですからね。何で1/40なのかって? まあスケールくらいしかアイデンティティーを発揮できないというか、同じスケールで良くできたキットがあると違いが明白になってしまうという悲しい現実があります。閑話休題。いつもそうなのですが、胴体は半割にして作ります。コックピットなんかを作りやすくする為です。でまあこの程度の造作なのですが。この機体に関してはとてもテールヘビーになることが予想されますので、薄板で箱を作って(肉抜き)それに人工木(サンモジュールTW)を貼付けて四角いすりこぎ(?)を作ります。これをゲージに合わせてさくさくと削ります。この行程は楽しい。どんどん形になっていくのでストレスがない。ただ先は長いのですが。ちなみにこういう模型を作るときの素材としては朴の木を使うことが多いようですが、科学の進歩を無視する手はない。人工木の方がずっと具合がいいです。狂わないし、木目を殺す(下地)必要は殆どないし、切り口がささくれることはないし、水がしみ込むこともない。でも問題は値段と入手性だね。

胴体(その2)

紆余曲折を経て何とか左右胴体を合体!風防の型も作ってつながり具合を見る為に載せてあります。胴体下の機銃バルジは別部品で作り後でつけます。このように明らかに不連続な膨らみは後で取付ける方がすっきり出来ます(面倒ですが)。こうして見るとなかなかいい感じ(自画自賛)。ちなみにタミヤの1/48ウーフーはいいと思うけれど、型抜きの都合らしいのですが、どうも胴体中央部の断面(肩の部分)が丸すぎるような。ココはこだわって四角く(いかつい)、そして翼の直後でぐっと丸くなる(優しい)断面変化が僕のウーフーのイメージです。斜め前から見た場合、断面変化が急な箇所で角が出る(スミソニアンの復元機参照方)ことで確認できますね。凸凹具合のチェック用に一応自動車用のプラサフを吹いています。

主翼

主翼はテーパーの切り替えごとに分けて5分割しました。テーパーの切り替え部分がさりげなくはっきりするようにという配慮なんです。が、1体で作るかどうかと比べて、つなぎ目の処理を考えるとどちらの方がよかったかは微妙ですね。ま、努力はしたぞと。ハインケルの主翼平面形には一貫した思想の変遷がありますね。He70ではプラントルの理論に正直に則って楕円翼。そこから無理してもあんまり直線テーパー翼と性能差がないじゃないかということが分かってきて(多分)、後縁のみカーブさせて様子を見てHe178、He280。で、He219では後縁を直線で纏めつつも3段階に変化させて少しでも楕円翼に近づけようとしている(と思える)。前縁を一貫して一直線あるいはほぼ一直線にしているのは翼端失速対策だろうね。多分今日He219と同じような飛行機を作る場合、内翼は直線テーパーなしで作るだろう。閑話休題。翼型や捩り下げについては分かりません(泣)。He 2 37 16.8-0.715-36.6(root)、He 2 37 12-0.715-36.6(tip)という翼型は多分ハインケル謹製。16.8/12が翼厚比のことか?36.6は最大翼厚位置か?真実は歴史の彼方。それらしく作るしかないね。あと翼をいい感じに作るコツは、おおむね出来たところで等%コードで何本か線を引いてその線にあわせて定規を当てる。隙間があれば凹にパテ盛りあるいは凸をペーパーがけでしっかり面を出すことです。ここに一手間かけるとピンとした男前の翼になるんですね。人の目って翼の左右の長さが数ミリ狂っていてもわからないけど、翼の面が出ていないと何となくぐにゃりとした印象になる。あと後縁のシャープさと各角度も気にしたいところだ(と思っていても出来るかどうかは・・・努力しましょう)。

尾翼

水平尾翼翼型は逆キャンバー。一応動翼を分割。ま、努力はしたぞと。互いに角度がついているので組み立てには治具を作りました。垂直尾翼が2枚なのは後ろ向き機銃がついていた頃の名残か?手間がかかるなあ。

ナセル

ナセルは後端が無駄に(?)ピンと尖ったところがかっこいい。こういうところはすぐぶつけて壊れてしまうので最後迄削らずに取っておいてなおかつ、あらかじめ真鍮線を仕込んでおきます。翼の取り付けのほぞと脚収容部はどのみちくりぬいてしまうのですがコンター(外形)の流れを見る為に別材で作って仮止めしておいて削りだします。まあまあ出来たかなというところで仮止め部分を取り外し脚ドアのヒートプレス原型とします。とまあうまく行ったように書いていますが、途中で図面のナセル推力線が?(垂れ下がっている)であることが判明したり、ぱきっと破滅の音がしてしまったり、削りすぎてポリパテの世話になったりと順調に悪戦苦闘しております。

小物

ここで少し小物を。スピナ、タイヤ、カウル、ホイール等の回転体は人工木の挽きもので作ります。でシリコンゴム型→レジン注型。オトナなので時間をかけずにお金をかけます。ホビー用の旋盤を買ったんですが、これで何でも作れるぞっと意気込んだんだけど、なかなか使いこなすのは大変。目指せ、東大阪の町工場の旋盤マイスター、なんちゃって。プロペラは何本か作っていいものをシリコンゴム型→ホワイトメタル化。レジンではプロペラのような薄いものは無理があるね。プロペラ機はどうしてプロペラ機なのかと言えばプロペラがあるからで、そのアイデンティティーたるプロペラにはこだわりたい。プロペラは思いのほか薄いしねじれている。その薄さ具合、ねじれ具合が難しい。最終的にはまあこんなものかと自分を合理化してしまうのですが。ちなみに良くできたプラモでもたいていプロペラが厚いしねじれが足りないような気がする。棒きれっぽいというか。素組でも後縁を少し研いでやると男前がアップするはずだ(多分)。あとラジエータ等もそれらしくでっち上げてと。次に続きます。

仮組

出来た部品を仮組してみました。ちょっとは出来た感を自分で演出しないとモチベーションが続かないもんだから。出来はまずまずと言ったところか?(楽観的)そろそろ筋彫りを考えるのですが、これが悩ましい。胴体についてはレストア機のwalk around写真が参考になるのですが、主翼についてはよく分かりません(泣)。世間に流布している図面を見てもみんないろんなことを言っているし、「世界の傑作機」のウーフー号を見ても主翼についてよく分かる写真がない。大体「世傑」はタミヤのプラモの形を是として、それにデティールアップする為の資料という位置づけという気がする。もっと飛行機としての形とかメカに焦点を当ててほしかったような。閑話休題。ある程度悩んだら、覚悟を決めて前に進む(嘘をつく)しかないね。

ウーフーの脚って結構大変なんです。主脚はオレオより上が3つ又になっていて、外側2本がナセル内の基部につながり、更に後方にもストラットが伸びているという構成。タイヤもダブルでトレーリングアームに支えられているという、言葉で説明してもよく分からない(笑)。はっきりいってここでスタックしてしまいました(1年弱!)。ディテール感と強度の両立が大変っす。で、何とか未完成病を克服して、アルミ棒(オレオ摺動部)、真鍮棒と真鍮板、洋白板で個々の部品を作り半田付けと黒瞬着で組み立てました。最初は先が見えなくて(うまくできるか分からなくて)モチベーションが上がらないけれど、形になってくると面白くなる。さて3点姿勢を保てるようにバラスト入れまくった重い機体を支えることができるか?

完成

で、何とか形にしました。反省点多々なれどにやにや眺めるのはいいもんだな。他人から観たらつまらん模型でも自分の作った物は自分が一番かわいく思う。親ばかみたいな物か?で、冷静に反省点。ホワイトメタル化したプロペラおよび前タイヤ、スピナ、ナセル、前脚カバーにまで仕込んだバラストのおかげで尻餅つかずに3点姿勢を保つことに成功。で脚も折れずに持ちました。でも最初の段階で脚を付けることを考慮していないといかんよな。泥縄では無駄に時間がかかるという、まあ、物作りの基本ですね。あと、各部のアラインメントにも気をつけたいところだ。此処で模型のしゃっきり感が違ってくる。手先の勘に頼るのではなく極力治具を作った方が早道。いや要のレーダーアンテナがアサッテ の方向を向いてしまった物で。塗装もいい加減。モデルアートの別冊にあった塗装図を元にしたのだけれど、写真では確認しておりませんし、細かい仕様もあっているかどうかはよくわからない。しかしまあドイツ機らしいメカっぽさとハインケル流の優雅さが同居したHe219は(少しは)再現できたかな。