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トリガーポイントブロック(痛点注射)について
筋筋膜性疼痛症候群(MPS:Myofascial Pain Syndrome)〜

    ○筋筋膜性疼痛症候群(MPS)・トリガーポイントとは
    ○「痛みの悪循環」とは
    ○トリガーポイントブロック(痛点注射)とは
    ○トリガーポイントブロック・関連痛の例

筋筋膜性疼痛症候群(MPS)・トリガーポイントとは

 「筋筋膜性疼痛症候群(MPS:Myofascial Pain Syndrome)」は「筋痛症」とも呼ばれ、その名の通り筋肉に痛みが発生する病気です。あまり耳慣れない病名だと思いますが、筋肉、筋膜および周囲の軟部組織にうずくような痛みやコリを主症状とする疼痛症候群をこのように呼んでいます。こういってしまうと特殊な感じがしますが、実は普段よくみられる、ありふれたものなのです。
 筋肉に過度の負担がかかり、筋の緊張をきたし、血流が障害され痛みが発生すると考えられています。通常、筋肉は重いものを持ったりして痛めても数日〜数週間すれば痛みは引いてきて回復したり、マッサージしたり温めたりすれば治ったり(いわゆる筋肉痛の状態)するものです。
 しかし、回復の過程で更に筋肉に過大な負荷や繰り返しの負荷が加わったり、ストレスがたまっていたりして血行が悪い状態ができてしまうと、その部分の筋肉がスパズム(けいれん)・硬直を起こし、自己回復できない状態になってしまいます。結果的に筋肉は弾力性を失い、痛みを起こす物質が局所にたまった状態となります。コリ固まった状態です。

        『痛みの悪循環とは』へ続く

≪参考≫
 加茂整形外科 http://www.tvk.ne.jp/~junkamo/
参考図書⇒
 MPS研究会 のホームページ http://www.jmps.jp/
 MPSの患者ネットワーク http://www.mps-patients.net/
 トリガーポイント研究所 http://trigger110.net/index.html

 NHKの「ためしてガッテン」でも筋筋膜性疼痛症候群や
  トリガーポイント注射の効果が詳しく取り上げられました。   http://cgi2.nhk.or.jp/gatten/archive/program.cgi?p_id=P20090304

 TBSの「はなまるマーケット」でも筋筋膜性疼痛症候群や
  トリガーポイント注射の効果が詳しく取り上げられました。
  http://www.tbs.co.jp/hanamaru/tokumaru/20091110.html


痛みの悪循環とは

 痛みが続き「痛みの慢性化」になってしまうと、徐々に治療が難しくなっていくだけでなく、心にも身体にも大きなストレスとなり、痛みの改善がますます困難となります。「痛みがある⇒筋肉がこわばる⇒筋肉の血行が悪くなる⇒さらに痛みがでる⇒さらに痛みがでる⇒さらに筋肉がこわばる⇒さらに血行が悪くなる⇒ますます痛みがでる」という「痛みの悪循環」が生じます。≪下図参照≫
     

 この状態になってしまうと、マッサージなどをちょっとやったり、患部を温めたりくらいでは解決することができず、時に激しい痛みを伴う慢性的な痛みになっていきます。この特徴は、筋肉内にしこり(硬結)があり、痛みに対し敏感な点(トリガーポイント、痛点)を有することです。そしてちょっと複雑なのが、トリガーポイントと痛みを感じている部分が離れていることがしばしばあることです。 別の場所にあるのに、押すとなぜか普段痛む場所に激痛が走るのです。つまり押された場所と、痛む場所が違うこともあるのです。肩、首、腰などの痛みの中で、コリコリした部分がある場合は筋筋膜性疼痛症候群の疑いがあります。
 筋筋膜性疼痛症候群は、骨格筋が存在するところであれば全身どこにでも起こりうるものですが、好発部位として姿勢筋(背骨を支えて姿勢を保つ筋肉)に起こりやすく、後頭部、頚部、肩甲部、背部、腰部などの痛みとして表現されます。すなわち、一般的によく聞かれる頭痛、肩こり、腰痛という訴えの多くが、この筋痛症に起因すると考えられています。
 例えば太ももやふくらはぎの痛みは、腰のヘルニアや脊柱管狭窄症による坐骨神経痛と間違われることが多いですが、殿部の筋肉(小殿筋や梨状筋など)が原因になっている場合もあります。
     『トリガーポイント・関連痛の例』参照
 近年、生活様式の変化(運動不足やストレスなど)による筋肉の弱体化に伴い、この筋筋膜性疼痛症候群は増加の傾向にあるといわれています。

    『トリガーポイントブロック(痛点注射)とは』へ続


トリガーポイントブロック(痛点注射)とは

 一般的な予防および治療法としては、適度な運動、ストレスの解消、マッサージ、薬物療法などがあります。しかし、症状が進行したものや慢性化したものに対しては、トリガーポイント(痛点)を中心に少量の局所麻酔薬を注射し、スパズム(けいれん)・硬直を止めるトリガーポイントブロック注射と呼ばれる治療が基本となり、当院でもよく用いる治療法のひとつです。
 ブロックは、痛みを感じている部位を一時的に抑えてしまう治療です。ブロックをすることで、痛みを感じている部分の血管を広げ、血流を改善させます。血流が良くなると、患部に十分、酸素が行き渡り、患部に滞っている痛み物質も洗い流してくれます。痛み物質が綺麗に流れ去り、組織の回復が促されると、筋肉・神経にとっては一時的なブロックであっても、その後、痛みが戻ってきません。不要な痛みを速やかに治療して「痛みの悪循環」を断ち切り、血行の改善を促進し、組織の酸欠状態を回復させることによって自らの治癒力を引き出すのがこの治療をする最大の目的です。

 症状が軽ければ1回の治療でも効果がある場合がありますが、症状が重い場合は複数回に渡って治療をします。さらに長期に渡って痛みを感じていた場合は、痛みの信号が脳に連続して入った事により痛みに対する脳の機能が過敏になっているので、脳の動きを抑える薬(主には安定剤や抗うつ薬など)を併用するとより効果的です。ただし、他疾患の2次的症状による筋筋膜性疼痛の場合、原因疾患の治療が優先される事は言うまでもありません。

    『トリガーポイントブロック・関連痛の例』へ続く

≪参考≫
トリガーポイントブロックに用いる薬剤
○キシロカイン
○ネオビタカイン

トリガーポイントブロック・関連痛の例

 下図はよく坐骨神経痛と間違えられやすい小殿筋のトリガーポイントとその関連痛を示しています。MRI検査で椎間板ヘルニアがあると、このヘルニアが原因と間違えられることも多いです。
 
       図は 『Myofascial pain and Dysfunction The Trigger Point Manual』 より引用

 下図は胸鎖乳突筋のトリガーポイントと関連痛を示しています。この筋肉は首には痛みを出さず、顔面、頭部に痛みを放散します。鎖骨部のトリガーポイントは自律神経現症としてめまい、胸骨部のトリガーポイントは涙の分泌、目の充血を起こすことがあります。
 
        図は 『Myofascial pain and Dysfunction The Trigger Point Manual』 より引用

 下図は棘上筋(左)と棘下筋(右)のトリガーポイントと関連痛を示しています。それぞれの筋肉は腱板とよばれている肩の回旋筋群に含まれています。いずれも肩から上肢にかけて痛みが出現します。
 
        図は 『Myofascial pain and Dysfunction The Trigger Point Manual』 より引用

 下図は肩甲挙筋のトリガーポイントと関連痛を示しています。この筋肉はその名が示すとおり、肩甲骨を持ち上げる格好をしています。そのため常に負担のかかりやすい位置にあります。肩や肩甲骨周囲に痛みが出現します。
 
      図は 『Myofascial pain and Dysfunction The Trigger Point Manual』 より引用

 下図は腰方形筋のトリガーポイントと関連痛を示しています。この筋肉は脊柱を起立させる筋肉の一部で、比較的深部に存在します。腰部・殿部に関連痛が出現するため、坐骨神経痛と間違われることがあります。
 

 下図は大腿四頭筋(A:大腿直筋、B:内側広筋)のトリガーポイントと関連痛を示しています。大腿四頭筋は太ももの前面にある大きな筋肉で、一部の筋肉は股関節・膝関節をまたぐため、負担がかかりやすく痛めやすい筋肉です。また、膝周囲に関連痛が出現しやすいため、膝関節の軟骨がすり減って痛んでいると間違われることが多いです。
 
          図は 『Myofascial pain and Dysfunction The Trigger Point Manual』 より引用

  詳しくは下記参照
    The Trigger Point & Referred Pain Guide(http://triggerpoints.net/