2004年1月


1月10日

京極夏彦
覘き小平次


出版社:中央公論新社
装丁:渡辺和雄
装画:森流一郎
発行:2002年9月15日
ISBN:4-12-003308-2
定価:1900円

あけましておめでとうございます。
まず、HPリストラ第一弾として、表紙画像を省略することにしました。
スキャンしてサイズ合わせて、ってやってる時間をもっと別なことに使おうと思いまして。著作権的な問題もあるでしょうし(今さらですが)。
リクエストあるようなら再考します。御意見お寄せください。

さて、本年一発目はこれです。
借りたまま読んでなかったこの本、年の瀬にようやく読みました。
面白いです。相変わらず素晴らしい筆力です。
難しい漢字を多用しつつも、まったく苦にならずすらすら読めるこの柔らかさは天下一品。
元ネタは「耳袋」なんかにも入ってる妖怪譚みたいですね。どういう話かまったく知りません。
大根だが、幽霊芝居だけは天下一品、生きているのに妖怪同然の暗い役者・小平次さんと、彼を取り巻く人たちの人間ドラマです。
小平次は何もしないのに、彼を見て狂気にさいなまれていく周囲の人々と言う状況がかなり怖いです。
キャラも立っている。傑作でした。新年早々嬉しいことです。


1月10日

N・E・ゲンジ
完全科学捜査マニュアル

THE FORENSIC CASEBOOK

訳者:安原和見
出版社:河出書房新社
装丁:岡本洋平
発行:2003年12月10日
ISBN:4-309-20394-9
定価:1800円

これも面白かった。
その名のとおり犯罪現場で鑑識がおこなう行為を中心に、最先端のテクノロジーでどこまで出来るのかを説明してくれます。
もう役に立つ情報満載で、付箋だらけになってしまいました。
DNA鑑定、指紋採取、法昆虫学、筆跡鑑定…。
「毛根のない髪ではDNA鑑定できない」なんかいいネタだよなー。
サブテキストとして文字通りマニュアルとします。


1月10日

金子達仁
泣き虫


出版社:幻冬舎
装丁:平川彰
撮影:宮澤正明
発行:2003年11月20日
ISBN:4-344-00415-9
定価:1600円

さて、最近変なキャラを作りこみすぎてしまって引っ込みつかなくなってる“男”高田延彦の伝記です。
「業界の人だとタブーを破れないから」とわざとプロレス畑ではない著者を起用した、という話らしいですが、その割りにおとなしい、という噂でした。
というわけであまり期待していませんでしたが(ブックオフで買った)、なかなか面白かったのですね、これが。
今では周知と言えば周知ですが、やはり当時のトップの一人から「UWFがガチンコではなかった」と告白されると衝撃です。
高田には愛憎ありますが、やはりこの世界を啓蒙し、先陣切って道を切り開いてきたことには素直に敬意を表します。
しかし今のキャラを立てすぎてプロレス復帰・・・はやめてほしい。


1月10日

と学会
愛のトンデモ本


出版社:扶桑社
装丁:?
発行:2003年8月20日
ISBN:4-594-04149-3
定価:1238円

あれ?どこを見ても装丁者の名前がないぞ? ま、いいや。
愛とセックスについてのトンデモ本特集です。
ちょっとワンパターンに飽きてきましたね。
あんまり面白くなかったです。
特に面白くなかった本はいちいち書評載せるのやめようかなーとも思い中。
ちゃんと決めてからリストラ決行しろよって話ですね。すんません。
徐々に徐々に。あ、久しぶりにジョジョ読みたくなってきた。


1月26日

パット・マガー
探偵を捜せ!

CATCH ME IF YOU CAN

訳者:井上一夫
出版社:東京創元社(創元推理文庫)
装丁:矢島高光
装画:浅倉めぐみ
発行:1961年3月10日
ISBN:4-488-16401-3
定価:388円

古い本です。なんとなく古典本格が読みたくなったので図書館で借りました。
特にこれを選んだのは、去年北村薫が読売新聞で週刊連載していたミステリ紹介ページに面白そうに書かれていたからです。
通常のミステリでは、事件が起こり、数々の容疑者の中から探偵が犯人を特定する。
それがこの本では綺麗に逆転しており、犯人は最初から明らか。元女優が遺産目当てに金持ちの夫を病死に見せかけ殺害。だが、既に妻に疑いを持っていた夫は生前に探偵を呼び寄せていた。現れたのは四人。果たして誰が探偵なのか? 犯人による推理が始まる…て感じです。面白そうでしょ。
多少ムチャな展開もそこは本格ミステリのご愛敬。あれよあれよと楽しく読み終わりました。若干ラストがあっさりしていたかな、とも思いますが、古典ですからシンプルでしかたないでしょう。面白かったです。


1月26日

清水義範
日本語必笑講座


出版社:講談社(講談社文庫)
装丁:岩郷重力
装画:太田垣晴子
発行:2003年11月15日
ISBN:4-06-273900-3
定価:571円

なんとなく面白そうで手に取ってしまいました。
日本語の最近の変な使われ方を的確に分析しています。
好きです、そういうの(笑)。

「犬のフンをしないで下さい」
「柔道道をきわめた」
「予想もつかないほどの大勢の人出が予想されます」


とかね。
ほかにも流行語の変遷史や、政治家の言い回し、時代劇の言い回しなどの解析(というほど大げさなものでもない)など、軽妙かつ鋭いエッセイ集で、楽しめました。


1月26日

花村萬月
百万遍 青の時代(上・下)


出版社:新潮社
装丁:新潮社装幀室
発行:2003年11月15日
ISBN:4-10-446702-2(上)/4-10-446703-0(下)
定価:1800円(上)/1900円(下)

待望の萬月超大作です。
「王国記」シリーズと対をなすような、自伝的要素の濃い大長編となっています。
しかもどうやらこの分厚い上下巻でプロローグ終わり、て感じです。
まだまだ続きそうです。
情念が匂いたって噎せかえりそうなこの濃密な筆力。
巨大な哲学的思索を内包した圧倒的な内面描写。
純文学もエンターテイメントも飛び越えた奔放な展開。
何もかもが萬月そのもので、読んでいる間じゅう至福でした。
素晴らしいですね。
プロットを組み立てて書きたいテーマを書く、というよりは、筆に任せて産まれ出た情景に、後付で深い思索を付与していくような感じ。
説明しにくいな。「萬月節」としか言いようのない「濃さ」がとにかく素敵なのです。
分厚くてしり込みしている方には、「ゲルマニウムの夜」(王国記シリーズの一作め。芥川賞受賞作)をオススメします。


1月26日

ミスター高橋
プロレス 影の仕掛人


出版社:講談社(講談社+α文庫)
装丁:鈴木成一デザイン室
発行:2004年1月20日
ISBN:4-06-256813-6
定価:700円

プロレス界の裏の裏までさらけ出したあの世紀の暴露本、「流血の魔術 最強の演技」に続く一冊です。
今回は特にマッチメイカーという存在がいかに大きいか、という話をメインにしています。 相変わらず飛ばしてます。面白いです。
WWEなみにカミングアウトすべき、という著者の主張には必ずしも同意できませんが、やはりここまで書いてくれると覗き見的下世話な好奇心が満足されて一気読みでした。
前作は格闘技ミステリを書くときにもずいぶん参考にさせてもらいました。
業界にとってどうだったのかは知りませんが、僕個人としてはこの手の暴露は大歓迎ですね。単純に面白いもん。


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