古本探偵団(1940〜)

  

海軍雑誌 海と空

海と空社刊 1944年1月発行(85銭)

海軍御用雑誌

一瞬空と海かと混乱しました。当時は横書き場合左から/右からというのはまちまちだからね。タイトルからしてもろに海軍御用雑誌という感じですね。何と言っても“勝利に輝く帝国海軍”ですから。が1944年である。敗色がますます濃くなっていった時期であることを現在の我々は知っている。当時の一般的国民はまだ勝利を信じていたんだろうね。なにかしら詐欺被害者を見るような心境です。海軍大佐の栗原某という人が書いた、青年に訴ふという檄文(?)が引っかかる。その当時の軍の(政府)の建前というか大義名分が明らかになっている。大東亜戦争は米英の謀略によるもので、日本にとって聖戦であり天皇陛下に生命を捧げることで無限の力が生じるという論旨は、今の目で見るとオカルトめいたものに見える(ユダヤ云々という言葉も出てくるし・・・苦笑)。この手の話はもういいか。空の戦艦という記事が面白い。航続距離が3万km、巡航速度1250km/h、爆弾搭載量20ton、装甲重量10ton、総重量200ton、噴流火炎(註:ジェット噴射のこと)で迎撃機を蹴散らすというその性能は凄すぎて、何というか、富岳なんかうっちゃっていてほとんど海底軍艦「轟天」だ。もちろん、実現性なんてかけらもなくてまさに言うだけの紙飛行機なんですが、その超兵器ぶりの割に大型機関砲を50門、2万mより精密爆撃照準機で爆弾をNYに投下というのはちぐはぐ。ミサイルなんて思いもつかなかった当時の人間の想像力の限界を知る思いです。でも最後は“その兵器を扱う人の闘魂如何にある”とのことです(とほほ)。
追伸。この雑誌、敗戦をくぐり抜けなんと少なくとも1960頃迄続いていた。もちろん、海軍雑誌云々との記述はなくなりましたが。