古本探偵団(1940〜)

図1 屠龍もどきのA-18

 

図2 投稿超音速機

 

工人社刊1942年6月発行(65銭)

教育的雑誌

表紙の写真がいいですね。撮しているのが戦時で写っているのが兵器(零式3座水上偵察機)であることを忘れるようです。それはともかくこの本も教育的な内容です。出版の工人社って戦後の鳳文書林なんですね。航空関係の専門書を出しているところだ。銃後の日本ではみんな必死に飛行機を勉強しようとしていたんだね。航研の所員を集めての座談会。ドーリットルの日本空襲から高々度飛行による爆撃に話題が移る。研究者だから技術的に可能性があることを述べているのですが、米国の基地からは日本爆撃ができないと言うことであまり切迫した様子は見られない。確かにB-29は米国本土からは日本爆撃ができないけれど、サイパン、テニアン、沖縄が陥落したなら、そしてB-29を大量生産したならば・・・と考えるのはやはり戦略家の考えることか。現在の私が得ることと言えば、やはり油断をしてはいけないということか。それはそうと特集のカーチス飛行機の小史に出てくるA-18攻撃機(図1)、俺だけかなあ、屠龍に似てる気がする。まあ、偶然なんだろうけど。
最近「空」の別の号(1941年12月号)を入手したので追記を少々。奇しくも開戦直前号ですね。特集は模型飛行機の理論と製作ということで、模型飛行機の製作記事なんかが載っているのですが、境界層や強度計算の方法まで解説してあって、これは既に高校レベルを通り越して大学レベルですね。すごいぞ「空」。あと名物コーナーとして夢の飛行機を投稿するというのがあって、これがなかなか面白い。これ(図2)なんか超音速機ですよ。当時は音速を超える飛行機なんて不可能というのが一般常識だったようですが、そこで怯むような日本男児ではないのだ。曰く“(超音速飛行が不可能ということについて)否!断じて「否」と謂いたい。否そう成さしむのだ”とある。でも衝撃波が超音速飛行の妨げとなるとの投稿者自身の解説もあって、へー結構知られていたんだなってちょっと感心。少なくとも全く音速付近の空気力学について全く知られていなかった訳ではないんですね。ま、今の目で見ればとても超音速飛行はできそうにないデザインなのは仕方ないですが。この投稿もそうだけど、熱いんですね(痛いとも言う)。今風にいえば意識高い系? たかが素人の投稿者じゃねえのってのは言わない当時の空気だったのである(多分)。