古本探偵団(1950〜)

図1:若き日の坂井三郎

  

特集丸 日本の空軍 零戦と隼

潮書房刊 1958年2月発行(120円)

戦記ブームというものがあった

昔、といっても戦後10年以上たった昭和30年代頃に戦記ブームというのがあったそうです。私は物心つく前(世代的にはもっと後)だったのだけど、それでもゼロセンや大和の名前は気がついたら知っていたって感じ。学年に1人や2人はゼロセンおたく(その名前はなかったけれど)がいたし。漫画雑誌にも戦記マンガがあったこと連載されていたことも、グラビアページにゼロセンの記事が載っていたことも記憶にある。ま、この私の世代の一般教養みたいなもんで。昭和30年代というと、戦時中一線で戦っていた人が、30代から40代の働き盛り。生活に余裕もでき社会的な地位も発言権もある。そんな戦中派世代のアイデンティティ探しが、一時とはいえ連合軍戦闘機を圧倒した件の戦闘機(零戦/隼)に投影された結果ではないか?(特に論証もしていない脆弱な理論なのですが)戦争はよくなかったけれど、俺たちはよくやったよ。その証拠にゼロセンハヤブサを見ろよと。この本を見るに勿論とても子供向けではない。オトナたちの間でおこった戦記ブームが子供に飛び火して戦記マンガが流行った・・・のかな。当時の子供にしてみれば戦争に何の反省もなく、ただかっこいいからゼロセンに飛びついたということでしょう(私の実感)。で、この本の内容ですが、関係者が語る開発ストーリーや戦記といったもので、今の目で見ると特に目新しい発見はないというか、そういう話は既に人口に膾炙しているので、今更という感じもしてしまう。勿論当時は「丸」読者にとっては目新しく、面白い読み物だったのでしょうが。ふと思ったのですが、当時の戦闘機を操縦するとはどういう感じの体験なのだろうか? 音は振動は匂いはスピード感は各種レバーの操作感はそしてどういう色だったのか?(いまだに零戦の塗装色がどうだったかという飴色論争なんてあるし)そういうことにとても興味があるのだけれど、そういう目で見ると、あまり期待には応えてくれない。ま、元パイロット達に要望されていたのは勇ましい勝ち戦と悲壮な負け戦の話だからね。ただ、当時の関係者の多くが鬼籍に入られた今となっては、聞きたくても聞けない。この本の筆者達の近影を見るに50年前ですから皆さん若い!(図1) 社会の第一線ばりばりですね。それゆえもっと戦記以外の話も伺ってもらいたかった気もします。追伸ですが、ゼロセンのゼロは英語由来の言葉だから敵性語となる訳で、戦後発祥の言葉という説がありましたが、実は戦中からゼロセンということもあったようです。で、いつ頃からA6(工場ではこう呼ばれていたようです)、零式艦上戦闘機(正式名称)、海軍新鋭戦闘機etcが、ゼロセンとして人口に膾炙するようになったのか興味がある。1つには言い易い名称だったというのがあるけれど、ネーミングというか商業的な目的でゼロセンという名前をフィーチャーされたのではないかと睨んでいるのですが。ちなみにこの本では既にフツーにゼロ戦という単語が使われていました。