軍神 加藤少将写真伝記
東洋経済新報社刊 1943年(2円50銭)
カリスマ
軍神加藤少将である。隼戦闘機部隊長(第64戦隊)だった加藤建夫少将が戦死した後に出版された本である。内容はというとまあ、写真集だね。写真集というと今はグラビアアイドルであるが、彼も銃後の日本ではアイドルだったのである。いやアイドル呼ばわりすると不謹慎かもしれないが、カリスマというともっとしっくりするかもしれない。彼の戦死の後に国民の気持ちを一つにする為にこのような祭り上げられ方をしたのだね。前書きには同種の本が沢山刊行されたとの記述がある。彼の生い立ちから、葬儀の様子まで写真で追っていくという内容です。私は特に興味がない(軍神としてあがめるという意味で)ので、1人の職業軍人としての人生がそこにあるなあという感想です。彼には洋行経験(写真もあります)があり、アメリカの実力も認識していたという。恐らくは戦争の行く末も予測していただろう。だが異を唱えることなく職業軍人として任務に殉じた。彼の心の内はどんなものだったのだろうか?戦後生まれの私にはちょっと想像できないが。戦死後軍人としての建前のみが増幅されステロタイプの軍神となっていった(と思える)。この辺りは現在特攻隊員を、愛する人を守るため云々といって美化する風潮に近いものを感じる。ま、イデオロギー的なものを採り上げないポリシーなのでこれ以上は深入りしませんが。
で、どうしてこの本を買ったかというと、機体の珍しい写真(細部およびマーキング)があるかなと思ったからなのでした。尾翼マーキングについては外れだったね(当たり前)。撃墜マークについてはアップ(図1)あり。95式戦闘機の運用(パチンコにてエンジン始動等)が分かる写真が興味深い(図2)。