古本探偵団(1940〜)

  

世界の翼

少年文化社刊 1949年6月20日発行(200円)

カストリ航空誌

ラジオと模型という雑誌の増刊という形態です。戦争が終わって4年足らず昭和24年の本ですが、ページをめくるに思うのは、すごい時代だったんだね。1ページ目はX-1だ。1947年に音速突破したとのキャプションがありますが、具体的なスピードは書いてありません。秘匿されていたらしい。あとはF-86とかご存知の機体のオンパレード。ついにはB-47まで。日本では数年前まで最高速度500km/h台の零戦の性能向上に汲々としていたのに、欧米では後退翼のジェット戦闘機が最高速度1000km/h台だ。プロペラ戦闘機なんて完全に時代遅れになっている。飛行機の進化に於けるカンブリア紀とでもいいましょうか。当時の人が目を丸くしていたのが見えるようです。こりゃ戦争しても勝てないわな。
ソ連についても紹介されているのですが、プロペラ機についてはそこそこ情報があっても、ジェットについてはよくわからない状態だったようで、魑魅魍魎がうようよしていますねえ(図1)。ドイツ機(Me262)を大いに参考にした(パクった)ような機体が紹介されています(図2:ラヴオチキンLAG-8)。実際そのような機体はあったけれど(スホーイSu-9等)当時のソ連でも好意的には見られなかったようであらかた没になったようです。ただ当時の西側の情報筋ではナチスの血を引いた超兵器がソ連で作られているように思われていたようです。調べてみるとドイツから分捕ったDFS-346をテストしていたとのこと。穿ちすぎた見方かも知れないけれど、ソ連の技術では無理でドイツの技術をパクって初めて音速に挑める機体が作れる・・・と思われていたのかもしれない。Mig-15ショック以前の話です。
巻末に最近の世界航空界という木村秀政氏の記事が載っていて、その中ではジェットとロケットを総称して噴流推進と呼んでいますが、ターボジェットやターボプロップ、ラムジェットまで解説されています(ターボファンはない)。ジェットという言葉がすっかり日本語になっていますね。
あと物資の窮乏を示すかのように紙質が悪い(ざらざら)。資金と技術をどんどんつぎ込んで超音速に挑戦している欧米(特にアメリカ)のニュースを紹介しているのに・・・