2.八咫烏
その日、蒼坊主は2ヶ月ぶりにのり子の家に帰ってきた。
呼び鈴を押そうと手を伸ばしかけた時、庭の方にのり子の気配を感じた蒼坊主はそのまま門を入って、庭の方へ歩いていった。
やっぱり庭か・・・・・・また、花の世話をしているんだろうな。
庭をのぞいてのり子を見つけた蒼坊主は、声をかけようとして一瞬ビクッとした。
のり子の肩に大きな黒い鳥が止まっている。
いつもと変わらず、ハンギングに花を植えている様子を見ると、のり子にその鳥は見えていないらしい。
「のりちゃん・・・・・。」
「あっ蒼坊主さん、お帰りなさい。」
作業の手を止めて軍手をとると、のり子はうれしそうに蒼坊主に近づいてきた。
肩の鳥は止まったままである。
「のりちゃん、肩の辺りなんともないかい?」
「えっ・・・大丈夫ですけど・・・・・何かいますか?」
「いや・・・・だったらいいんだが。」
怖がらせる必要は無いと思った蒼坊主は、のり子に鳥の話はしなかった。
近くで見るとその鳥には足が3本ある・・・・・・。
八咫烏か・・・・・のりちゃんにいったい何の様だ?
そのとき八咫烏は突然のり子の肩から飛び立って、今度は蒼坊主の肩に止まった。
「ふんっおまえが父親か・・・・・・のり子も苦労するな。」
そう一言言うと、八咫烏は今度は空へと飛び立って、そのまま消えてしまった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
どうやら、八咫烏がゲゲゲハウスに現れたのは偶然ではないらしい。
まあ、目玉のおやじさんの知り合いらしいし心配ねえと思うが、とりあえず鬼太郎には話しておくか・・・・・・・。
「それじゃあ、おやじさん1ヶ月ほどしたらおれかのりちゃんが迎えに来ますんで、それまでよろしくお願いします。2人が泊まる所は、砂かけのばあさんに頼んでます・・・・・・・おれはこれからちょっくら飛騨まで行って来ます。」
「天、碧、おやじさんの言うことを聞いていい子にしているんだぞ。」
「はーい。」
「おう、蒼。気をつけて行ってくるんじゃぞ。」
「ああ、そうだ鬼太郎ちょっといいか?話してぇ事があるんだ、横丁まで送ってくれよ。歩きながら話そう。」
「めずらしいなぁ♪蒼兄さんが送ってくれだなんて・・・・それじゃあ父さん、僕ちょっと行って来ます♪♪僕の分のケーキは食べて良いですよ。」
!!!!!!
「にゃにぃーーーーーーーっ!!鬼太郎のために焼いてきたのに、それじゃあ意味が無いじゃない!!!!!」
ねこ娘の目がギラリと金色に光り、爪も伸びてすでに臨戦態勢である。
・・・・・・・ああああああっ・・・・・・しまったああぁ・・・・・・・!
「蒼兄さん!!急いでいるんでしょ、早く行きましょう・・・・・・。」
「おっおう・・・・・そうだな・・・・・・。」
言うが早いか2人はゲゲゲハウスを飛び出していった・・・・・・。
「キイイイーーーッ何なのいったい!!!もうっ全部自分で食べてやるわよ!!」
「よっよせ!ねこ娘、無茶するんじゃあない!!こりゃっ鬼太郎ー!ちゃんとフォローしていかんかー!!」