一週間後の午後、
いつもはゲゲゲハウスでごろごろしている鬼太郎が、めずらしく蒼天坊主と紺碧坊主の様子を見につるべ落としの店にやってきた。
内心は二人のことが気になっていた鬼太郎だが、なんだか気恥ずかしくなかなか足を運ぶことが出来なかった。
今日は目玉おやじが買い物をしたいというので、それを口実に横丁に来ることにしたのだ。
つるべ落としの雑貨屋に近づくと店先の縁台に紺碧坊主が座っているのが見えた。
「やあ、紺碧君。店の手伝いには慣れたかい?」
「・・・・・・・・・・。」
?
どうも様子がおかしい、縁台に座った紺碧坊主は目を開いて前を見たままピクリとも動かなかった。
妖怪の術かも知れない・・・そう思った鬼太郎は妖怪アンテナを立ててみたが怪しい妖気は特に感じられない。
「父さん、これはいったい?」
「う〜む・・・・どうやら人形のようじゃが・・・・誰が、何の為に・・・・?」
「蒼天君はどうしたんだろう?とりあえずつるべ落としに聞いてみましょうか、父さん。」
「そうじゃな・・・・。」
「おーい、つるべ落としー・・・・・・・・んっ?」
くすくすくすっ・・・・・
店の奥にいたつるべ落としは、鬼太郎と目玉おやじを見て笑っていた。
「わーいっ!鬼太郎おじさんだまされたぁー♪」
「えっええーっ!!」
「まっまさか・・・・・」
つるべ落としの横からひょっこり顔を出した蒼天坊主に言われて振り返ってみると、さっきまで人形のようだった紺碧坊主が満面の笑みで立っていた。
「あはははははーっ人形のフリしてたんだ。鬼太郎おじさん、全然気が付かないんだもん。笑いそうになちゃったよー。」
・・・・・・・気配を消していたのか・・・・・そんな、あそこまで完全に消せるものなのか?
「全然気が付かなかったよ。もしかして蒼天君も出来るのかい?」
「うん・・・・・でも紺碧の方が、うまく出来るんだ。」
「うーむ、この気の消し方は・・・・のり子さんの影響かもしれんな。何せのり子さんは、邪気がほとんど無いからのぉ・・・・・。」
「はあ・・・・そうなんだ。」
のり子さんて・・・・・いったいどんな人なんだろう・・・・・。
「実は2人とも、お歯黒べったりが明日から風呂屋の手伝いをしてほしいと、言っておるのじゃが。・・・・・・つるべ落としも・・・・・・良いかな?」
「おおっ、ヒマな店なのに一週間も飽きずに店番してもらって助かったよ。また遊びにきてくれよな・・・・。」
「はーい。」「つるべ落としのおじさん、どうもありがとうございました。」
というわけで、今度は2人はお歯黒べったりの風呂屋を手伝うことになった。