4.カラスの入浴
「じゃあ、とりあえず大浴場の掃除をして、お客さんが来たら背中を流してもらえるかねえ。」
「はーい!!」
次の日の午後、お歯黒べったりの風呂屋に行った2人は早速仕事を頼まれた。
どうやら今度は退屈しないで済みそうである。
「なあ、蒼天。ずいぶん妖怪にも慣れたと思ったけど、やっぱり目がないってのはちょっと話しにくいよな・・・・・・。」
「どこ見て話していいか迷っちゃうよね。話し方とか人間よりよっぽどやさしかったりするけど・・・・・・笑ったとき歯が真っ黒なのもドキッとするしね。」
「ああいうのが、妖怪らしい妖怪って言うのかな?」
「じゃあ、父上とか鬼太郎おじさんはぜんぜんだめじゃん。」
最上階の大浴場に着くと、早速2人は掃除を始めた。
床を磨き、椅子と桶を片付けて湯船に湯を入れ始めたが、どうも様子がおかしい・・・・・
さっききれいに重ねたはずの桶が、又散らばっているのだ・・・・・・。
「おかしいなぁ・・・・・さっききれいに積み上げておいたのに。」
「おい、紺碧・・・桶にさわらなかったか?」
「さわってないよ・・・・・それよりこっちも・・・・さっき片付けた石鹸がまたいろんな所に置いてあるんだ・・・・踏まないように気をつけろよ。」
「ああ・・・・・妖怪横丁だもんな・・・・・不思議が普通なのかな?」
・・・・・・・・・・私の仕事なのに・・・・・・・・・
「何か言ったか、蒼天?」
「えっ何も言ってないよ。」
変だと思いながら同じ事を何度も繰り返しているうちに、夕方になってお客の妖怪達が浴場に入ってきた。
2人が声をかけて背中を流し始めると、子供好きの妖怪達は我も我もと2人を呼び始める。
「おーっ、蒼ちゃんの息子達か、うれしいねぇ孫が出来た気分じゃ。」
「次、こっちお願いできるかのー。」
「はーい。」
・・・・・・・・・・私の仕事なのに・・・・・・・・・
「えっ?」
子泣き爺いの方へ近づこうとした蒼天坊主は、声に気をとられて床の石鹸に気付かず、それを踏んで滑ってしまった。
「あぶないっ、蒼天!!」
ドサッ!!
床にたたきつけられる!そう思った瞬間、蒼天坊主は何か黒いものの上に投げ出された。
触ってみるとなんだかフサフサしている・・・・。
「あっ八咫烏さん!ありがとうございます。」
「うむ・・・・気をつけるんだぞ。」
・・・・・・・あああ〜、なんだいあの黒いのわぁ・・・・なんだかこわい〜・・・・・
・・・・・・・これじゃあ、あの2人にいじわるできないわぁ・・・・・・